パンパを走る夜行列車


 アルゼンチンの長距離列車は決して多くないのですが、ブエノスアイレスに複数あるでかい駅舎がそびえるターミナル駅から出て行く様子は鉄道黄金時代の凄さを感じさせてくれます。ここではそのうちの一つ、ブエノスアイレスから南西に600kmほどのところにあるバイアブランカ(Bahia Blanca)に行き夜行列車に乗ったときの様子を紹介します。


★コンスティトゥシオン駅

 バイアブランカ行きなどブエノスアイレスから南に向かう長距離列車のターミナルはコンスティトゥシオン駅(Constitucion)です。

 この駅は近郊列車ポルトガルからの中古気動車に乗るためにも訪れたので当サイトでは3度目の登場ということになります。長距離列車のホームは駅に入って左の端にあり、改札は近郊列車と別になっています。発車時間や行き先札がくっついたアナログな番線表示がなかなかオシャレですが、客車はかなりくたびれている感じ。

 これから長時間お世話になる機関車。 編成は機関車+Pullman2両+食堂車+Primera2両+Turista3両の9両編成です。


 ちょっとカワイイ食堂車の食材を輸送するためのカゴを見たら車内の様子を紹介します。私の切符は3等級あるうち最下位のTuristaクラス。別にケチったわけではなく出発前日にコンスティトゥシオン駅の窓口に行ったら上2クラスが売り切れだったためです。(客室内は室内灯がついていなかったり、ついていても非常に暗かったので画像は翌朝のもの。)

 このTuristaクラスの座席は近郊列車でも見かけた2列+3列の転換クロスシートで、運が悪いことに私の座席は3列の真ん中という最悪の席でした。夜を過ごすのに両脇が埋まっていては狭くてかなわんと発車して検札が終わった後に前後の車両を歩き回ったところ3列席が空いていたので占領。幸い終着まで他の乗客が来なかったので一応横になることができました。

 参考のために上位2クラスの車内画像も付け加えておきます。左下が2等のPrimera、右下が1等のPullman。

 座席の大きさ自体はさほど差がないように感じましたが、Pullmanは冷房つきでキレイ、Primeraは冷房なしでボロめという差があります。客層は見る限り3等級ともそれほど差を感じなかったので、快適な上のクラスから売れていくという感じなのかも知れません。運賃は上から66・50・40ペソという具合でアコモの差ほど差をつけていないように思われます。

 バカンスシーズンらしくどのクラスの車両もこれから遊びに行くという雰囲気の家族連れや若者のグループが目立ちました。退屈すると太鼓叩いて歌い出すという具合でにぎやかかつ和やかなムード。文字通りの鳴り物入り旅行と相成ります。

 発車は19:45なので車窓はすぐに暗くなります。外を見るとこちらと同じバイアブランカと書かれた2階建ての長距離バスが長いこと併走していました。

 暗い車窓に飽きたら夕食を食べに食堂車に向かいます。どんなメニューかとわくわくしていったらサンドイッチしかないというのでちょっとがっかり。それでもアルゼンチンでポピュラーなミラネーサ(牛カツ)が挟まった大きなサンドイッチをほおばればとりあえずお腹いっぱいになり機嫌が直るのですから現金なもの。


 腹がくちたら眠くなっておやすみなさい、のはずですが、前述の通り3列席を占領して横にはなれたものの窓ガラスにはヒビが入り床には穴が開いていて地面がのぞくという有様。1月は夏の南米とは言え夜はすきま風で冷え、あまり用意してきていない乏しい上着を重ね着しやるせない一晩を過ごします。毛布持ってきてかぶってる人のうらやましいこと。

 さらに真夜中には突然ガッチャーン!とガラスが飛び散る音。すわ列車テロか、と思ったら投石でした。(画像は翌朝撮影)訪問時アルゼンチンの鉄道では窓の金網を見ませんでしたが、これでは将来張られる事態もあり得るのではないかと心配になります。そんなこんなでせっかくの半寝台状態でもあまり落ち着いて眠れないまま夜が明けてしまいました。

 明けて車窓が見えるようになるのはいいのですが、何せ大草原パンパを行く大陸の列車だけに雄大、あるいは大味な景色。島国根性丸出しでちまちましたものを好む私はややもてあまし人間のスケールの小ささを改めて自覚しました。

 そんな中草原の真ん中にある通過駅で見る長い貨物列車との交換は楽しいアクセントになります。

 扉の丸い窓はガラスは嵌っていないことが多く、洗面所も水が出なかったりで客車の整備が追いついていない様子でした。

 そのうちいくらか小味のきいた景色になってほっとしているとぼつぼつ停車駅で降りる客が目立つようになります。そういえば車内・駅構内共アナウンスや発車ベルは全くありませんでしたが、手動扉だと最悪飛び乗りもできるので不安はありません。

 線路際に生えた木や草にはかなり寛容なようです。こんな形になってしまった木はちょっとお気の毒だけど元気なものですね。


★バイアブランカ到着

 郊外の貨物駅を過ぎ町に入ってバイアブランカ駅に到着。640kmの長距離を走るにも関わらず9:50に定時到着とはご立派。長距離列車の終着駅に漂うほっとした空気というのはなかなかいいものです。

 列車の本数が少ないためかバイアブランカ駅前には店などがなく栄えていません。少ないながらタクシーが停まっていて着いた乗客が乗り込んでいました。また客車や蒸機が保存されていて外から眺めることができます。

 ここバイアブランカからさらに南の南米にも鉄道はあるのですが、あとは長距離の客車列車や観光用蒸機なので電車や気動車が好きな私はあまりそそられません。なのでバスに乗り換えて西に進みNeuquenという都市を経由してチリの旅客鉄道最南端のテムコ(Temuco)に向かいました。


★おまけ 長距離バスについて

 バイアブランカの長距離バスターミナルは駅の南東にあり駅から徒歩20分ほどと少々距離があったので荷物が多いと大変です。また一本道ではないので通行人に聞きながら行った方がいいと思います。

 ちなみにブエノスアイレス・テムコ間を陸路で移動するならこのバイアブランカを経由せずブエノスアイレスからNeuquenまでバスで直行した方が便数も多く便利です。(実は最初そうしようと考えたものの「乗りバス」を自称するくせに夜行バスが苦手なので避けるため遠回りでもバイアブランカ経由の鉄道に逃げたという次第。)

 ついでながらアルゼンチンの長距離バスのシートは各社それぞれの基準でクラス分けがなされ複雑な様相を呈しています。ランク名をざっと羅列するとSemi Cama,Cama Economico,Cama,Cama Ejectivo,Suite,Super Camaなどという具合。少々のリクライニングしかしない席からほぼ横になれるほど広い席まで選択肢の多い都市間では悩むことになりそうです。


景色は乗った後に(遠距離館)アルゼンチンもくじ>このページ

inserted by FC2 system