トロワバレー蒸気鉄道(後編・Treignesの博物館)


 後編は前編で見たMariembourgから出るTreignes行き保存列車に乗る話から始めます。ちゃんとしたホームからではなく機関庫の隅からこっそりという感じが好ましくうれしくなりました。この日の運用はルクセンブルク国鉄(CFL)で活躍していたドイツ製気動車Z200。流線型の好ましいスタイルで2両編成を組んでいます。客室は並んでいるボックスシートの背ずりが低く広々とした雰囲気です。

 保存運行をするMariembourg〜Treignes間は制限速度が40km/hなのにわざわざこの車両の最高速度105km/hを書いた上で横棒で消しています。車両の名誉(?)を重んじているのか、あるいは出し過ぎに注意という意味かな。車掌さんの制帽には「C.F.V.3V.」とちゃんとこの鉄道の名前が入っていて貫禄があります。


 では発車。Mariembourg〜Treignes間は川沿いを走る14kmの路線で、途中に3つ駅があります。(所要時間:気動車・ディーゼル機関車牽引列車28分/蒸機列車は38分)ものすごい名勝地というわけではないものの、保存専用線としてはなかなかの距離があるうえ橋ありトンネルあり踏切ありと景色が変化に富み乗り応えがありました。

 かぶりついていたら停止を示す腕木信号機が立ち、手前で一旦停まったら電動っぽい動きで進行現示になりました。閉塞とは関係がない自動踏切と連動しているもののようです。凝ったものを作るものですね。また自動でない小さな踏切では一旦停止し係の方が下りて警備・誘導し徐行で通過するという保存鉄道でよくある方法でした。

 そんなこんなで終点のTreignes駅に着くと今度は鉄道博物館(右下の画像の左奥)が見え、大変のどかな空気です。

 Treignes駅から先は1962年まで国境を越えたフランスのVireux Molhain駅まで線路がつながっていました。その後その国境区間は廃線になり、ベルギー側はこのように保存鉄道として残ったもののフランス側はそれっきりで線路跡も消えつつあります。Treignes駅〜Vireux Molhain駅間は約4kmありますが併走する路線バスもありません。

 というわけでここから先には行けない気動車の前照灯に赤く透ける板が掛けられ尾灯となり折り返しに備えます。その様子を見てから博物館に向かうと構内の側線には古そうなレールバスや朽ち気味の車両群が見えました。


 さらにミニ列車用らしき線路も、と外だけでもいろいろあるのですが、博物館内にはもちろんキレイに整備された車両が所狭しと並んでいます。


 保存されている車両は蒸機に電機にディーゼル機関車に客車・気動車・事業用車…と挙げていくとキリがないので気になったものをちょっとだけ。これはややエライ人が視察するときなどに使う1948年製のインスペクション・カー。真ん中にエンジンと運転台があり、前後には乗用車のような座席が設けられています。床下を覗き込むとチェーンが見えました。この種の車両は日本の近くだと台湾の製糖鉄道にある「巡道車」を思い出します。


 各国の制帽コレクションなんてものもあります。日本の制帽にはコケシ、のように各国にちなんだモノが一緒に並ぶ凝りぶりながらベトナムの制帽と月桂冠の壜が一緒だったりも。遠くの国が似たようなものに見えるのはお互い様ですね。


 軽快のようでもあり逆に重々しいようでもある不思議な存在感があったのが1936年製の気動車608形。両運転台で前後とも同じ流線形「顔」で迫力があります。最高速度は126km/h、ただし営業運転では85km/hまでといいますから実用よりもデザイン上の意味合いが強そうです。世界中で流線形が流行った1930年代頃の車両を見るとひとくちに流線形といってもいろいろなスタイルものがありますが、この車両はイギリスのグレートウェスタン鉄道の気動車に通じる気がしました。

 ひと通り見て満足したら列車の椅子を模した喫茶コーナーに向かいます。せっかくベルギーに来たのだからビールを飲もうとメニューを見るといくつも並びうれしいけれど悩ましいところ。このあとまだ行動するのだからあまり飲んではいけないと思いつつ、シメイの樽生に『蒸気列車スペシャル』なるビールと2杯飲んでしまいました。どちらもウマかったのですがこのあと歩きがややキツくなり反省…。


 というわけで乗って見て飲んで、と大変楽しめる保存鉄道でした。飲んだあとはMariembourgには戻らず徒歩で国境を越えフランス、さらにまたベルギーと鉄道・バスを乗り継いだのですが、その話はこちらに場を移しますので続けてお付き合いください。


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