実直顔の釣り掛け近郊形電車(AM62〜79)


 ベルギー鉄道は路線網の大半が電化されています。(直流3000Vが主流)この路線網のローカル輸送を担っているのが貫通扉が目立つ実直というかいかにも実用本位という愛想のない顔をした近郊形電車群です。ベルギー鉄道で現役の電車のうち最も古いタイプがこれで、1962年から79年までの長きにわたりほぼ同じ車体で増備されました。ただ機器等は増備の時期により違いがあり、各グループの製造が開始された年の西暦をとった呼称が使われます。(例:「AM62」1962年製造開始のグループ・AMはフランス語のautomotrice/電車)ここではこのうち最も古い時期のAM62を中心に見てみます。

(※なおこれより古い世代のベルギーの近郊形電車に中古でイタリアに渡って活躍しているものがあります。例:その1 その2)


 のっけから暗い画像で恐縮ですが件のAM62です。この電車は二等車のみの制御電動車と一等・二等・荷物室に分かれた制御電動車がペアで1単位になっています。つまりクモハ+クモロハ二が基本単位というとわかりやすいでしょうか。運転室は進行方向右側の半室に詰め込まれているのでやや圧迫感があり、クモハ側の先頭左側は機器室で曇りガラスになっています。


 客室内の様子。左の2+3ボックスシートが二等客室、右の2+2ボックスシートが一等客室です。窓は上部が左右に開く開口面積の小さいもので外側から側面を見たときのよいアクセントになっています。落ち着いた雰囲気の客室で釣り掛け音を聞きながら乗り鉄するのはこれまた言うまでもなく楽しいものです。


 クモロハ二の運転室に隣接して荷物室があります。クモロハ二の先頭左側は曇りガラスの機器室ではなく普通のガラスが入った助手席になっているので、一等を示す黄色帯とあわせクモハ側とは違う「顔」です。


 以上見てきた渋いアズキ色の車両は非更新車で、下の画像のように塗色が明るいものは更新車です。この画像はシングルアームパンタで上の菱形パンタと違っていますが、これは更新の有無と直接の関係はなく増備時点からの違いです。

 ここで増備時期による変化を追っていくと、初期車は菱形パンタで最高速度130km/h、1966年以降はシングルアームの採用と最高速度の140km/h化、1970年以降はチョッパ制御採用、と大きく3つの段階に分かれます。(いずれも混結可能)

 なお更新車にはこの画像のものとは違うデザインの『City Rail』更新車もあるのですがその話は別ページとします。


 ちなみに駅の構内では上の画像のような絵や装飾を見ました。(バッファーらしきものはご愛嬌ですが。)この近郊形電車群は長らくベルギー中を走り回っているので地味ながらベルギー鉄道の顔のような存在と言っていいのかもしれません。そんなことを考えていて思い出したのがやはり同じように長期にわたって製造された釣り掛け・直流3000Vの近郊形電車ポーランドのEN57で、地味な顔(?)同士比較するのも面白そうです。

 という具合にあれこれと見ていると長くなったので具体的な「乗り」の様子はこのページに場所を移すことにします。あわせてご覧下さい。(ドイツに向けて「国境越え乗り鉄」をしたときのものです。)


★おまけ 『AM75』とオランダ・ベルギー国境区間

 こちらは上記の貫通扉つき実直顔近郊形電車群がまだ増備されていた1975年に登場した釣り掛けチョッパ車『AM75』です。非貫通・鼻でっぱりと隣国オランダのドッグノーズをちょっと思い出させるものがありますがやや堅い雰囲気で、TcMMTcの4両編成を組んでいます。

 さてこの画像はベルギーではなくオランダのRoosendaal駅でのものです。Roosendaal駅の南隣はベルギーのEssen駅で間に国境があり、ローカル輸送はベルギー側の電車がRoosendaal駅まで乗り入れる形で行われています。この二駅の間にオランダ標準の直流1500V電化区間とベルギー標準の直流3000V電化区間の境界があるのですが、特に複電圧対応電車は用意されていません。このAM75のようにベルギー側の3000V用電車がそのまま1500V区間に直通しています。なのでRoosendaal駅を発車するとまず1500V区間で大変遅いノロノロ運転が続き、その後3000V区間に入ると急に加速を始めるという面白い乗り味が楽しめました。(なお国境はEssen駅付近にあり電化の境界とは離れています。)


景色は乗った後に(遠距離館)ベルギーもくじ>このページ

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