ブリュッセルの動態保存トラム


 ベルギーの首都ブリュッセル東郊に路面電車博物館があり、展示とともに動態保存が行われているというので乗りに行くことにしました。


 ブリュッセルにはブリュッセル中央駅(フランス語Bruxelles-Central/オランダ語Brussel-Centraal)という名の駅がありますが、高速鉄道の列車が停まる駅はそちらではなくブリュッセル南駅(Bruxelles-Midi/Brussel-Zuid)です。この南駅からトラムで博物館に向かいました。直通する系統はないのでまず81番に乗って東側の終端Montgomeryで降り、地下のループで折り返す39または44番に乗り換えるとほどなく「Musee du Tram/Trammuseum」すなわち路面電車博物館前というそのままの名前の電停に着きます。


 この博物館は車庫の一部を流用したもので現役の車両の車庫の隣です。表の道路側が博物館、奥が現役の車庫という並びで、入口を入るとすぐに鉄道馬車から電車に事業用車さらにバスやタクシーと数多くの展示車両がずらりと並びます。わくわくしつつまず全体像を見ようと奥まで行ったら喫茶コーナーがあり、何種類もタルトが並んでいたのを見て誘惑に負けしょっぱなから花より団子になってしまいました。

 車両群を見ながらおやつを食べたら改めて見物開始です。ブリュッセル市内のトラムは標準軌ですが、かつてベルギー全土に広がっていたメーターゲージのトラム網(関連内容はこちら)もブリュッセルに通じていたためその車両(下の画像左端)も展示されています。


 所狭しと並ぶ美しい状態の動態保存車両を見ていると博物館というよりまだ営業している路線の車庫にいるような気分になったりもしました。そんなたくさんの保存車両を細かく見ていくとキリがないので「乗り鉄」に話を進めます。


 訪問日の運行は1937年製の2軸の単車が2軸のトレーラーを牽くという編成でした。年末らしくサンタさんも登場する楽しい雰囲気です。

 ボックスシートが並ぶ車内には立派な車掌席もついています。


 トレーラーは小さい車体と中扉の組み合わせが面白く感じました。なお天井の黒っぽい板はヒーターです。寒かったので頭上に熱気を感じたとき思わず手を天井にかざしてしまいました。


 にぎやかで華やいだ雰囲気ながら全員腰掛けても席が余る程度の程よい乗客数で発車し、一般の系統は39番が走る路線を走っていきます。専用軌道が多く、静かな森の中を走っているとブリュッセルの中心からせいぜい15km程度の圏内とは思えません。博物館を出ると20分ほどでループ状の終点Tervuren電停に到着し、先をふさぐ39番の折り返しを待つ間が乗客の記念撮影タイムになります。


 森の雰囲気がよかったのでこの保存運行電車に往復乗らず周囲を見物してから39番で戻っても悪くないかもとちょっと考えたのですが寒さに負けすぐにとんぼ返りしました。博物館前に戻り入庫の際は推進運転です。ポールを回さないままの逆ポール走行はなんだか架線から外れそうな気がしてしまい見ていてちょっとドキドキしました。もちろん特に何ごともなく入庫します。


 というわけで見るのも乗るのも大変楽しい博物館でした。展示や保存車両の素晴らしさはもちろん、首都の中心からさして遠くない位置に緑豊かなばかりか古い電車が走るという美しい環境が存在していることにも感心するばかりです。


(2013年訪問)


景色は乗った後に(表紙)ベルギーもくじ>このページ

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