アルゴマセントラル鉄道(後編)


 前編のつづきです。列車は昼過ぎにアガワ川の谷間、つまり紅葉の名所のアガワ渓谷を走るようになります。紅葉の時期は終わっているのであまり華やかさはないものの滝も見えなるほどなかなかキレイなところです。観光列車で渓谷見物に来た乗客が降りて折り返すわかりやすい名前のCanyon駅は古そうな客車が置かれよく整備されているのでちょっと降りてみたい雰囲気があるものの、ここでの乗降客はなく停まらずに通過します。


 大荷物とともに下車する乗客がいたのはこの辺りまでで、もともと空いていた車内にはごくわずかな乗客が残るのみになりました。左の画像のような駅でもない誰かのお家の前で停まる一方、よく整備された先のCanyon駅や、川の名前そのままの駅名だけ見ると主要地点っぽい感じがしてしまう寂れたアガワ駅(右の画像)は徐行もせずあっさり通過して行くのはなんだか妙な感じです。


 アガワ駅を通過してしばらくするとアガワ川から離れて北上を続けHawk Junctionに到着します。ここはかつてスペリオル湖岸までのびる支線が分岐していた駅で、支線廃止後の現在も20分の停車時間が設けられ主要駅らしい扱いです。それだけにこの路線にしては珍しく駅舎・ホームさらに多くの側線を備えた駅らしい駅ですが駅前は閑散としていて買い物できそうな店などは見当たりません。


 Hawk Junctionを出て淡々と走り続けていたら急ブレーキがかかったので何かと思ったら軌道上にムース(ヘラジカ)がいたからでした。湖の水に足が浸かってもお構いなしにバシャバシャと走って逃げて行くのでなかなかの迫力です。角がないからメスでしょうか。乗り鉄していて野生動物に行く手を阻まれたのは江差線の廃止区間に乗っていてヒグマに停められたとき以来だったので妙なところでキハ40を思い出しました。そういえば車両にクマが描かれているくらいでこの辺りも種類こそ違うもののクマの生息地です。

 ムースが木立の中に逃げ込むのを見送ったらステンレス気動車が走るカナディアンパシフィック鉄道(Canadian Pacific Railway)と平面交差するFranzが近づきますが乗降する人はなく行く手を遮るカナディアンパシフィック側の列車もなくで停車せず足早に通過しました。ステンレス気動車の行先ホワイトリバー(White River)は「クマのプーさん」のモデルのクマの出身地なので頭の中はいよいよクマづくものの車窓にクマは出て来ないまま先に進みます。


 大陸横断列車「カナディアン号」が走るカナディアンナショナル鉄道(Canadian National Railway)と交差するObaまで来ると駅の手前で停車しました。ちょうどカナディアンナショナル鉄道側の長くデカい貨物列車同士が交換するところだったのでそれが終わらないと駅に入れません。

 なかなか動かない貨車を見ていたら軌道脇の水溜りに枝を積んだようなヘンなモノが目に入り、よく見たらビーバーの巣とダムでした。そのうちビーバーが出て来てスイーと泳いでいます。野生のビーバーを見るのは初めてで感心していたら職員さんが何やら協議中です。改めて見るとダムは軌道下の水路をふさいでいて、これでは放っておくと軌道が水を被ることになりかねません。それは困るというわけで水が流れるようダムをどける作業が始まります。


 ビーバーを見ているうちに貨物列車の交換が終わり、日が暮れて薄暗くなったOba駅をゆっくりと通過したらラストスパートです。1時間半ほど無停車で走るうちに真っ暗になって終点のハーストに到着しました。


 ハーストではオンタリオノースランド鉄道(Ontario Northland Railway)とレールはつながっていますがここで発着する列車は貨物列車だけなので列車を乗り継ぐことはできません。ただ長距離バスは東に向かうオンタリオノースランドの路線と西に向かうCaribou Coachが発着しているので前者で東に抜けました。

 駅を出るとバス乗り場・レストラン・ホテルととりあえず必要な施設は徒歩圏に揃っています。鉄道絡みでは立派な消防署になぜか蒸機と昔の駅舎が大きく描かれているのが目につきました。驚いたのは小さい町ながら映画館があることです。スケジュールを見るとフランス語で上映という但し書きがあるのが目につきました。ハースト付近はフランス語話者が多いのだそうです。その後レストランに入ったら店員さんがフランス語で世間話をしていたのでなるほどと感心しました。食べたのはカナダでよく食べられている料理「プティン(Poutine)」です。


(2014年訪問)


景色は乗った後に(表紙)カナダもくじ>このページ

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