アルゴマセントラル鉄道(前編)


 五大湖のスペリオル湖近くを南北に走るアルゴマセントラル鉄道(Algoma Central Railway)は紅葉の名所アガワ渓谷を通ることで有名です。夏から紅葉シーズンにかけては南端のスーセントマリー(Sault Ste. Marie)からアガワ渓谷まで「アガワ渓谷ツアー列車(Agawa Canyon Tour Train)」という観光列車が運行され日帰りで渓谷見物ができます。

 一方それとは別にスーセントマリーから北端のハースト(Hearst)まで全線475.9kmを走る定期旅客列車も通年運行されていますが、週3往復の運行で上下列車は別の曜日に走るため日帰りで往復できません。ここを訪問した時期は紅葉シーズンの後で観光列車の運行がなく、途中にめぼしい町もないようなので定期旅客列車に全線乗り通してみることにしました。


 スーセントマリーはスペリオル湖とヒューロン湖を結ぶセントマリー川(カナダとアメリカの国境)の北岸に位置し、南岸のアメリカ側にもスーセントマリーという同じ名前の街があって向かい合っています。ここまでの足はグレイハウンドバスを使いました。発着する場所(左上の画像)はHoward Johnsonというチェーンのホテルで中心部からはかなり離れ、中心部に公共交通で行くには最寄の市内バス(5番)の停留所まで400mほど歩かねばならず不便です。市内バスに乗ると中心部にある市内バスターミナル(左下の画像)までは15分ほどで、近くのStation Mallというショッピングモールに行き止まりの棒線1本と片面ホームのシンプルな駅がありアガワ渓谷ツアー列車の看板が出ています。

 さて乗ろうという定期旅客列車のダイヤは週3往復、スーセントマリーを月・木・土曜の朝出て夜にハースト着、翌朝ハーストを出て夜にスーセントマリーに戻るというものです。バスで着いた翌朝ホームの傍らにある駅舎に入ると昔の手漕ぎトロッコなどが展示され鉄道関連グッズの販売もありなかなか立派ですが発車時間が近い割に妙に静かで拍子抜けしました。受付で切符を買ったら「クルマで来たんじゃないの?じゃタクシー呼ぶ?」と聞かれるので驚いて事情を聞いたところここはツアー列車の乗り場で定期旅客列車は離れた場所にある車庫が乗り場とのこと。事前によく調べておかず乗り場を勘違いしていたというわけです。幸いアメリカからドライブして来たという乗客に同乗のお誘いを頂きタクシーを呼ばずに済みました。すぐ対岸だけにアメリカ人の乗客も多いそうです。


 数分クルマに揺られご厚意のおかげで着いた乗り場は車庫やヤードの広い敷地の片隅にありホームはありません。ハースト行きの列車はディーゼル機関車1両を先頭に荷物車2両、客車2両、電源車1両と続く6両編成で沿線に生息するクマがシンボルとして車両のあちこちに描かれています。奥をちょっと見物に行ったところ多くの貨車や客車の中で古風な展望車が目立っていました。


 駅らしくないところから発車するのでなんだかそう遠くに行く列車という気がしませんが、ここを9:00に発車すると終点ハースト着は18:40と所要時間は9時間40分にも及びます。乗り込むと2両ある客車のうち1両は無人、もう1両も十数人と空いていてゆったりとしたボックスシートが並び落ち着ける雰囲気でほっとしました。トイレがWashroom・Toiletteという2言語表記なのはカナダらしいところ。供食設備や車内販売はなく買い物できるような途中駅もありませんが冷蔵庫と電子レンジが設置されているので持ち込んだ飲食物を温めたり冷やしたりはできます。広い荷物室では荷物のみならず犬を連れた乗客が一緒に過ごしていたりも。


 発車すると街はすぐに終わり、郊外では木材の集積地やキャンピングトレーラーの溜まりを経て木々の間を登っていきます。いっとき眺望がひらけスペリオル湖が見えるようになったあと車窓は森林と湖水が続くばかりに。


 1時間半ほど走ったあたりから沿線に点在するコテージで過ごす乗客のため時々停車するようになります。コテージというとクルマで行くものと思ってしまいますが、この辺りは道路事情が悪く一般車で入れないため列車が使われます。停車地点は融通が利くのでコテージの前に荷物車が停まるよう見計らわれたくさんの荷物が降ろされる様子は自由乗降バスのようで面白いものでした。


 Bachewawa駅で自動車タイプのレールカーと交換すると間もなくスーセントマリーを出て3時間が過ぎMontreal川のダムにさしかかります。ここをカーブを描いて越える鉄橋はなかなかの見応えでした。

 この辺りでお昼どきになり乗車前に準備したサンドイッチなどつまんでまだ先が長い乗り鉄に備えます。(後編につづく)


景色は乗った後に(遠距離館)カナダもくじ>このページ

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