ポーラーベアエクスプレス(前編)


 カナダ東部の地図を見ると北極海に連なるハドソン湾の南端にジェームズ湾という支湾がくっついていてケベック州とオンタリオ州の間に食い込んでいます。このジェームズ湾の近くにムースニー(Moosonee)という町があり、ここがオンタリオ州の鉄道の最北端です。ムースニーは鉄道は通じていても車道が他の地域に通じていないため陸路で外部と行き来できる交通機関は鉄道だけということになり、ちょっと離島や飛び地を連想し興味をそそられました。

 ムースニーに通じているのはオンタリオノースランド鉄道(Ontario Northland Railway)の路線で、貨物列車のほかに定期旅客列車「ポーラーベアエクスプレス(Polar Bear Express)」が運行されています。道が通じていないところに行く列車となるとなんだか何日もかかりそうな気がしてしまいますがダイヤ上は日帰りできるのでとんぼ返りで乗ってみることにしました。


 ポーラーベアエクスプレスの南端はコクレーン(Cochrane)という地味な町です。ポーラーベアエクスプレスの運行区間には他の定期旅客列車が発着する駅がない、つまり他路線との接続駅がないので公共交通で他の地域と行き来する場合はコクレーン駅で長距離バス(オンタリオノースランドによる運行)に乗り継がねばなりません。今回はアルゴマセントラル鉄道の北端ハースト(Hearst)からバスに乗ってコクレーンに行きました。駅舎に入るとシロクマすなわちホッキョクグマの置物がありなるほどポーラーベアエクスプレスの駅らしいと感心しましたが、その名を持ちながら沿線にホッキョクグマは生息していないそうです。一応「ポーラーベア州立公園(Polar Bear Provincial Park)」という生息地のひとつに最も近いところを走る鉄道ではあるのですがムースニーからそこまでは300km以上離れ車道が通じていません。

 改めて列車とバスが一緒になった時刻表を見るとポーラーベアエクスプレスは1日1往復のみ(土日運休・夏季ダイヤは土曜日のみ運休)なので出発時刻と到着時刻が1つずつ書いてあるのみ。9:00にコクレーンを出ると299km走ってムースニーに13:50着、17:00に折り返してコクレーンに21:42に戻るダイヤです。発車時間が近づき乗るべくホームに出るとディーゼル機関車2両を先頭に長物車様の車用車×5、有蓋車×1、白く塗装された客車×1、ステンレス客車×2、食堂車×1、ステンレス客車×1、荷物車×1、電源車×1、有蓋車×3の計18両という混合列車が停まっていました。車道が通じていないところに行く列車に載ったクルマを見ると「走る道(?)」とでもいうような気がしてきます。


 クルマで行けないところに行く列車だけに乗客の手荷物も多く、荷物車付近にはローラーコンベアが設置されています。最後尾を見るとテールランプ代わりに赤い布がかかっているあっさりしたもの。


 先頭から最後尾まで見物しでは乗ろうと改めてホームを見るとシロクマが描かれていて気分を盛り上げてくれます。車内にはゆったりとした固定リクライニングシートが並び、色調はステンレス車(青)と白塗装車(赤)でだいぶ違いますがモノクラスです。


 というわけでコクレーンを発車するとすぐに町を抜け広い牧草地をしばらく走ったあとはずっと森林と湿地が続くようになります。また途中駅はリクエストしないと停まらないものだけなのでずっと走りっぱなし。幸い食堂車がついているので飽きたらコーヒーを飲むなどでき助かりました。


 車窓はめったに人家が見えず、時々茶色い水が流れる川を渡ったり交換駅が大事なアクセントになります。ことさら何もないような線路端に細い十字架が立っているのを何度か見ました。


 あまり山場もないまま5時間弱が経ちムースニーに到着。イヌも退屈したのか大喜びで降りて来ます。すぐに先頭側の貨物と客車の間で切り離しが行なわれ機関車と自動車は前へ走り去り、後部に目を向けると荷物車・有蓋車の荷物がホームに降ろされボートが目立っていました。

 というわけで着いたムースニーでは特に行くあてもないのでとりあえず駅前に出ます。(後編につづく)


景色は乗った後に(遠距離館)カナダもくじ>このページ

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