ポーラーベアエクスプレス(後編)


 前編のつづきです。ポーラーベアエクスプレスで着いたムースニーは原住民のクリー族が多い町で、駅前にはクリー語が書かれた三軸台車の重厚な荷物車が置かれているのが見えます。駅前にのびる目抜き通りを歩くと舗装こそされていないものの大きいスーパーマーケットもあり結構賑わっていました。

 このムースニーはムース川という大きな川の左岸にあり、川の中州にはムースファクトリー(Moose factory)という町があって向かい合っています。両者の間に橋はないものの乗合の水上タクシーが結んでいるので乗ってムースファクトリーも見物すると3時間ほどの折り返し時間はあっという間につぶれました。


 発車時刻が近づき駅に戻ると機回しが済み編成が出来上がっています。進行方向のコクレーン側に付け替えられた機関車と貨車はホームから大きくはみ出てしまい駅の近くにある橋上で停まっているためちょっとユーモラスに見えました。


 左の画像は一見普通の客車に見えますが食堂車です。コクレーンに戻る復路は往路に比べ荷物は少な目で小さい犬が入ったケージが目立つくらいでした。リクエストがあったらしく発車後は一度だけ途中停車があったもののあとはひたすら南下するばかりです。


 あまり変化がない車窓が暗くなりよく見えなくなったところで食堂車に行きました。前編で言及を忘れていましたがメニューにはクリー語が書かれています。往路では貼られていなかった「ディナースペシャル」が登場していたのでわくわくしながら注文しました。


 ディナースペシャルはマッシュポテトと厚切りのハムだったのでビールが飲みたくなるところです。カナダは酒類の規制が厳しめで、この列車が走るオンタリオ州では公共の場で飲むことはできず販売はレストラン等で供される場合を除くと専売店で行われています。幸いこの食堂車にはビールがあり、となると真っ暗な車窓も楽しく、食後はコーヒーとスコーンをお伴に過ごすといよいよ長居になり、とんぼ返りの往復では復路飽きてキツいかもという予想がはずれました。夜のコクレーンに到着するとほかの乗客は足早に散っていきます。


 コクレーン駅はホームの看板に表現されているように列車とバスの乗り場が一体となっている上、駅舎の2階はステーションホテルという便利さです。部屋は往路乗る前に予約してあり夕食は食堂車で済ませたので列車を降りたらすぐ部屋に上がって休むだけ、翌朝は駅舎に横付けする長距離バスに乗ればいいというものぐさには大変ありがたい流れになります。駅前に保存されている蒸機を見ながらコクレーンを後にしました。


(2014年訪問)


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