チェコのローカル電鉄


 チェコ鉄道(CD)の電化路線はほとんどが交流25000Vか直流3000Vですが、プラハの南にあるターボル(Tabor)とBechyne(ベヒニェ)を結ぶローカル枝線は珍しく日本でもおなじみの直流1500Vです。この枝線は1903年、チェコがまだオーストリア=ハンガリー帝国だった時代に電化私鉄として開業した路線で、チェコスロバキア独立後に国有化され現在はCDの一路線として運行されています。そんな生い立ちを知ってちょっと気になり、幸い旅程の途中にターボルを通ることになったので寄ってみることにしました。


 この路線のまず面白い点はターボル駅の乗り場がターボル構内ではなくターボル駅前にあることです。道路の真ん中にある棒線はいかにも元私鉄という雰囲気で1Bホームという名前がついています。

 走っているのは凸型の電気機関車が引っ張る客車列車です。客車は列車によりまちまちですが見た限り他のCD路線でも使われる標準的な客車が運用についているようでした。なお開業当初は電車で、その車両は動態保存され時々お蔵出しがあるそうです。ホームの端にはその車両の写真が掲示されていました。

 駅の外れで線路は本線や側線とつながっていて、本線の向かい側にはターンテーブルと扇形車庫が見られます。この側線を暗くなってから見に行くと野ウサギが線路を跳ね回っていて驚きました。


 では乗ってみます。元がローカル電鉄らしく曲線が多いためスピードはゆっくりです。ターボルの町を抜け橋を渡るとあとは田園風景や林の中を行く気持ちのいい車窓が続きます。暗くなった沿線の畑でシカが跳ねているのを見ることができました。ターボル駅の野ウサギといいこの辺りは自然環境が豊かなようです。時折小駅に停まるものの町らしい町も見ないまま単線を24km、50分前後で走るとベヒニェに着きます。


 この路線最大の見所に思えたのはベヒニェ駅到着直前に渡る併用橋です。そう広くない橋を制限10キロでそろそろと渡っていく様子は元私鉄らしく何とも楽しいものでした。客車が2両の短編成とは言え大きな凸型電機が堂々と渡る様子は迫力があるでしょうから撮り鉄や見鉄にもよさそうです。


 ベヒニェに着いたらすぐに機回しが始まります。車掌さんがポイントを切り替えていました。駅舎は無人で駅前は閑散としていましたが町中は少し歩いたところにあるようです。

 機回しが終わった電機が向かう方向のベヒニェ駅からターボル側を見ると勾配を下ったすぐ先に併用橋が見えます。乗ったのが夕暮れ時ということもあり11分の折り返し時間でとんぼ返りしましたが、緑の多い気分の良いところですから時間があれば町や併用橋を見物してみたいところです。


 戻ったターボルで投宿し翌日の朝食前に街中を走る様子を見物に行きました。踏切を鳴らしながら住宅や道路の真ん中を走っていくところに元私鉄らしい雰囲気が感じられます。


 という具合に暗めの時間ではあるものの乗ったり見物したりを楽しみました。乗れる車両は標準的なものですが小味のきいた路線なので乗り味はなかなか悪くないと思います。


(2010年訪問)


景色は乗った後に(表紙)チェコもくじ>このページ

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