チェコの釣り掛け気動車


 ここではルーマニア、ハンガリーに続きチェコで古い気動車のハシゴをしたときの様子を紹介します。乗ったのは動態保存されている車両で、チェコ南部の都市ブルノ(Brno)から出る列車の運用についていました。


★ブルノ駅

 今回乗る列車はブルノ駅を朝出発するレドニツェ(Lednice)行き。レドニツェは世界遺産に指定されている町でそこへの足として観光シーズンの週末に運行されるのがこの列車です。ブルノ駅本屋にくっついた1番線のホームに出るとすぐに古風なスタイルの車両が目に入ってきました。列車は前後が気動車、真ん中に自転車を持ち込む乗客用の客車を挟んだ3両編成です。

 画像左、どことなく南部縦貫鉄道を思い出させる塗色の気動車が列車の先頭に立つ830形(旧称M262形)。製造初年は1949年の釣り掛け気動車です。画像右の赤い気動車は後ろに連結された801形(旧M131形)。こちらの製造初年は1948年で車長が12m程度しかない寸詰まりのかわいらしい機械式2軸気動車で、830形とはシステムが違うためとりあえず客車と共に引っ張ってもらう立場ということになります。

 この列車が走る経路は(1)ブルノから南下しオーストリア国境手前のブジェツラフ(Breclav)まで電化された幹線(2)ブジェツラフから非電化単線の枝線に入り終点のレドニツェまで、という順番で計71km1時間38分のおつきあいです。


★釣り掛け気動車

 気動車なのになんで釣り掛けなのか、という話になりますが、タネを明かせばごく単純な話で電気式の気動車が釣り掛け駆動というだけのことです。ということはエンジン音と釣り掛け音が同時に聴けるというわけ。運転台も電車のような雰囲気です。

 乗る車両はもちろん釣り掛け音が聴ける先頭の830形。車内に入ると前中後の3つの部屋に分かれていて全室同じゆったりとしたボックスシートが並んでいます。走り出してわかったのですが、室内が分かれているため各室ごとに聴ける音が違います。最初真ん中に乗ったところブルートレインの14系客車みたいな一定のリズムを刻むエンジン音が主になり釣り掛け音があまり聴けなかったため前方の客室に移りました。前方の室内ではエンジン音をバックに釣り掛け音がよく聞こえ申し分ありません。幸いどの室内で1ボックス占領できる程度と空いていました。

 独特の走行音を響かせよく整備された本線上を快調に進んでいきます。色も形も違う3両がくっついている様子はなんだか模型でありあわせの車両をつないだよう。ブルノから途中Vranoviceに5分停車のみで1時間11分・59km走ると国境の駅ブジェツラフに着き、オーストリアから来たイタチマークの2階建て客車とならびます。

 ブジェツラフを出て枝線に入ると駅が増えスピードが落ち景色もだいぶのんびりしてきて、緑がキレイな車窓から馬や馬車に乗る人が見えました。わざわざ古風なドレスまで着ている凝りっぷりでこちらの動態保存気動車に通じるものがあるかも。チェコに行く前に寄ったルーマニアでまだ馬車が実用されているのを思い出し、こちらでは遊び乗りなんだなあと思ったのですが、そのルーマニアといえば古い気動車が動態保存ではなくまだ現役だったりするのでつい重ね合わせてしまいます。           

 湖畔を過ぎたら間もなく終点のレドニツェ、枝線内は途中4駅停車し12kmを23分で走ります。


★レドニツェ駅

 というわけで世界遺産の町レドニツェに着き他の乗客は観光に散っていくわけですが、こっちは気動車めあてですから立派でカワイイ駅舎を見たらそのまま16分後の折り返し列車でとんぼ返りすることになります。なお駅前は閑散としていますが町の中心まで1kmくらいですから歩いても大したことはないはずです。

 3両で到着した列車はこの駅で切り離しをして釣り掛け気動車と客車は夕方までお休み。1両になった小さな801形気動車は日中の支線往復を単行で担当し、夕方になるとまたくっつけて3両編成でブルノに戻るという運用です。


★機械式気動車

 というわけでレドニツェからブジェツラフまでの復路は801形単行のお世話になります。乗り込むと通路を挟んで4人掛けと1人掛けが並ぶという変わった座席配置が目に付き、このせいか小さな車内でも結構広く感じました。

 運転室を見物しに行くと貫通扉の小さな窓とコンパクトな運転台にいくつも並ぶハンドルが目に付きました。ハンドルが多いのは手だけで運転する機械式気動車だからですが、動力用3つ・ブレーキ用1つの計4つのハンドルを通常の操作で使うのはなかなか大変そうです。またこの枝線では通票が使用されていました。

 枝線ではスピードはさほど上げないものの2軸の古い気動車らしくよく揺れ往路とはまた違った乗り心地が味わえます。上下動は結構あるものの変速のショックが少ないのは運転士さんの腕がよいのかキカイがよいのか、おそらく両方なのでしょう。

 通票で閉塞をとっているのは本線に入る直前の駅Bori les駅まで。ここで運転士さんが駅員さんに通票を渡し発車合図の札が上がると本線に戻っていきます。一応60キロまでは出せる車両ですが信号にYYが見え速度は上げないままポイントを渡りブジェツラフ駅に到着。到着ホームは往路の本線直通列車だったときとは違い枝線の列車らしく駅本屋の端にある小さな頭端ホームでした。

 というわけで往復で釣り掛け・エンジン音を同時に聴ける電気式気動車と機械式気動車にまとめて乗ることができてしまうというなんとも効率のよい乗り鉄でした。観光地で動態保存車両の運転というからにはそれなりの人出があるかと予想していたところごくゆったり乗れ肩透かしをくらった感もありますが、いい意味での誤算ですからもちろん大歓迎です。古い車両を保存し走らせてくれるチェコ鉄道に改めて感謝。


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