「非電化化」路線を走る19世紀の電車


 ドイツ南部のバーデン・ヴュルテンベルク州にトロッシンゲン(Trossingen)という町があります。この町に通じている途中駅がない3.9kmの短い枝線に乗りに行きました。


 まず枝線が幹と分かれるTrossingen Bahnhofという駅(左の画像)に着くと乗って来た幹にあたる路線は非電化、枝線のホームだけに架線が張ってありなんだか逆のようです。ただ枝線の方も使われているのは電車ではなく単行の気動車でこれに乗り換えると5分ほど架線下を走ってトロッシンゲンの町中にある駅Trossingen Stadtに着きました。

 着いたホームには架線はなく、架線の延びる先は車庫につながっています。また1968年製の電車が上屋の下に停まっているのも見えわくわくしてきました。これはこの枝線でかつて運行されていた電車の保存施設で、一般の営業列車は気動車になったものの電車の動態保存のために電化設備(直流600V)が残されているというわけです。


 翌日は保存車両の運行日です。駅に行くと車庫の前にある動態保存車用のホームに1898年製という大変古い2軸の電車を先頭にした3両編成の列車が停まっていました。ビューゲルが2つ載り運転台はベスティビュールというなんとも不思議な雰囲気のこの電車は1898年にこの路線が開業したときから使われていたものです。真ん中の客車も1898年製、後ろにつく凸型電機は1902年製となると19世紀と20世紀を跨いだ編成を21世紀に見ているわけでどれも2軸の小さな車両ながら壮大な眺めという気がしてきます。


 電車の運転台はコントローラと手ブレーキのあっさりしたものです。客室は2・3等に分かれ間に荷物室のついたクモロハニという感じの合造車で2等だけ座席に座布団が敷いてあります。


 凸型電機はAEG製というので銚子のデキ3を思い出しました。デキ3は1922年製なのでこちらは20年も先輩ということになります。


 発車時刻になり気動車が行き来する合間を縫ってホームを出ました。かぶりつくと窓のガラスは中央だけにしか入っていないのでほぼ吹きさらしという感じです。現役の営業線だけに線路はしっかりしていますが最高速度は25km/hに抑えられブレーキは手ブレーキだけというのんびりした走りで一般列車が5分のところを12分かけてTrossingen Bahnhofに着きました。すぐに前照灯に赤いガラスが掛けられ尾灯になります。


 折り返しは凸型電機が先頭になりますが協調運転をするため電車にも運転士さんが乗り込みます。合図などは特にないようで時々横から顔を出したり様子を見ながらコントローラと手ブレーキを操作していました。短い枝線だけにあっという間にTrossingen Stadtに戻ってしまい降りるのが惜しくなりましたがこれは仕方ありません。


 この日走った3両も魅力的ですが車庫内には1956年製(左の画像)、1938年製(右の画像)の電車もきれいに保存されていてこちらも良い雰囲気です。

 という具合に見たり乗ったり楽しかったのはもちろん「非電化化」された路線に動態保存のため電化施設が保持されている素晴らしさと贅沢さに圧倒される思いでした。


景色は乗った後に(遠距離館)ドイツもくじ>このページ

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