鉄路博物館と非冷房バス


 香港島から少し「乗りバス」をしようと港澳碼頭巴士総站に向かいました。ここは名前の通りマカオに行くフェリーのターミナルに隣接しています。なのでマカオへ行く時にここが見え、その際に「あそこからバスに乗りたいなあ」と思ったので改めて来たというわけです。

 ここで182系統に乗りました。香港島の中心市街を西から東に抜け、海底トンネルをくぐって九龍半島を北上し新界地域にある愉翠苑(MTR馬鞍山線第一城駅近く)まで20kmを超える長丁場の路線です。もちろんというのか2階最前列の香港版マニア席(?)に腰掛けました。この席はシートベルト着用の旨掲示があり万一の時の危険度が高いようです。そのせいもあるのか見ているとどうも他の席から埋まりがちだったりしますが、他の席に比べ足元が狭いという理由もあるのではないかと思います。そういえば名鉄の今はなきパノラマカーもそんなところがありました。観光客ならバスマニアならずともここに腰掛けたくなるでしょうからうまく香港人と棲み分けできそうです。


 発車するとまず上環・中環・金鐘と中心街を東に走り乗客を拾っていきます。保護棒が目の前にあってやや目障りな感じですがこれは車窓に夢中になるとあまり気になりません。

 湾仔から一旦高架に上がり海底トンネルにもぐります。トンネル内は混んでいてゆっくりめの走りでちょっとかったるくなりました。海底トンネルと言ったって別にお魚が見えるわけじゃありませんし。でもなぜか路線バスが海底トンネル通るというと東京湾なんかでも結構ドキドキしますしまして香港だといよいよです。


 九龍半島に出て1号幹線という立体交差が整備された道路を北上します。街を抜け徐々に緑が増えると獅子山隧道が見えてきました。ここを抜けるとほどなく1号幹線を降りてMTRの東鉄線・馬鞍山線の大囲駅前に到着し、今回はここで下車します。港澳碼頭からは50分程度かかりました。


 大囲からは東鉄線に乗って4つ目の大埔墟へと向かいます。ここは釣り掛け電車が走っているのがうれしいところです。騒音対策がしっかりしているからか聞こえる音は小さめですけれども。

 大埔墟での目的は香港鉄路博物館(9〜17時開館・火曜休館)です。場所は大埔墟駅と一つ先の太和駅の間くらいで案内に従って歩くと10分くらいでした。この博物館は「旧」大埔墟駅跡を利用したものなので現在の大埔墟駅は言わば「新」大埔墟駅という関係になります。ありがたいことに入場無料だからか近所の人っぽい手ぶらの人が公園代わりみたいな感じで特に展示を見ることもなく憩っていました。


 九広鉄路の車両が展示されているのを見物しつつ面白く感じたのは結婚アルバムや卒業アルバムを撮影しに来たグループが目立つことです。中華圏や韓国では結婚するとき映画のワンシーンみたいなお二人さんの写真をいくつも並べた豪華な記念アルバムを作る習慣があり、背景はレトロめの洋風が好まれます。なので古い鉄道施設が背景に使えるこの博物館が使われるのでしょう。卒業アルバムはちょっと変わったところで撮りたいくらいの理由でしょうか。いずれにしてもばっちり衣装とメイクをキメた幸せなお二人さんの側でイカ帽子にガウンの学生さんが撮影しているというのは面白いものがありました。なおあまりに撮影隊が多く来るのか一応結婚撮影禁止の旨掲示は出てはいましたが建前はともかくヤボこと言いっこなしで黙認されているようです。


 博物館の後は賑わう大埔墟の市場を見物してバスでシメることにします。お目当ては珍しくなった非冷房車のみで運行されている73系統です。南盛街で乗り込むと「台風のときは2階の窓を開けて下さい。(ただしエアコン付きのバスを除く)」というちょっと面白い注意書きが見えます。


 香港とは言えもともと暑くない12月なのであまり「本来の(?)」非冷房らしさは味わえないのですが、香港のエアコン付きバスは涼しい日でも冷房を強く入れていて寒かったりするので非冷房車の方が快適なくらい、という暑い時期とは違った意味での非冷房らしさを味わう結果になりました。太和駅に隣接する太和邨商場で降りると高い天井も2階建てバスのおかげでそこまで高くないような気がしてきてなんだか面白いものです。


(2010年訪問)


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