コルカタの路面電車(前編)三角線折り返し


 近年縮小傾向にあるコルカタの路面電車に乗りに行って来ました。乗ったときの様子を以下の前編と別項の後編に分けて見て行きます。


★三角線折り返し(18系統)

 コルカタの路面電車は片運転台で折り返しは基本的にループ線ですが、18系統の西端では三角線を使って折り返しています。場所はコルカタの中心部と巨大なターミナルのハウラー(Howrah)駅を結ぶハウラー橋の東詰付近です。

 これを見物しようと現地に着くと三角線はハウラ―橋につながる高架橋の下に展開していて、三角の真ん中にはポイントマンの職員さんの詰所になっている小さな小屋がありました。やがて東側からやって来た電車はまず南側に突っ込み、すかさずポイントが切り替えられます。


 ポイントが切り替わると南側から北側へとお尻を前にしての移動です。逆ポールで運転士さんがコントローラに手を掛け身を乗り出してそろりそろりと動かす様子はちょっとスリリングでした。北側に突っ込んでポイントを切り替えたら無事方向転換が済みます。この折り返し作業はほとんど止まることなく流れるように進むので意外にのんびり眺めている余裕がなくあわてて乗り込みました。こんな具合で折り返しの様子をひと通り眺めたらルーマニアのトラムの三角線折り返しをちょっと思い出したりです。


 ここでちょっと車内の様子を紹介しておきます。あっさりした運転室にはイギリスGECのデッカーのコントローラと空気ブレーキ、手ブレーキが並び計器類は圧力計1つだけでした。コルカタの路面電車は大半が連接車で前の車両の客席は前向きの固定クロスシートの上に巨大な扇風機、後ろの車両はロングシートの上に小さい扇風機と異なっています。かつては前が1等車・後ろが2等車だったそうですがその区別はなくなったためどちらに乗っても同じ運賃です。前が電動車なので釣り掛け音を聞いてかぶりつきたい私のような向きは1等車の運賃を払わずに済むようになってよかったとしみじみ思いました。


 さて走る電車道にはところどころ停留所の表示が出ていることもあったのですがない場合が多く、またどうも停留所と関係なく道端で乗客が手を挙げていたり乗客が降りると言うとどこででも停めているようなのでだいたい自由乗降状態という感じです。さらには飛び乗り飛び降りもよく行なわれていました。

 車掌さんは前と後ろの車両に1人ずつ乗っていて発車はチンチン・停車はチンで合図を送るのでワンマンのニセチンチン電車(?)ではなくホンモノのチンチン電車です。頃合を見て切符を売りに回って来ますが均一運賃ではないので切符を買う時にはどこまで行くか言わねばならず、車内に路線図の掲示はなく停留所名がわからないのでとりあえず行先の辺りにある通りの名などを言って買いました。ところでなぜ下の画像で車掌さんが2人とも交差点で外にいるかというと曲がるときにポールが外れてしまい直しに行ったからです。ポールの先はスライダーではなくコロコロ回るホイールがついています。

 軌道の位置は道路の中央と端の場合の両方があり、端の場合は駐車スペースにされてしまいがちです。フートゴングを鳴らしまくってもクルマのヌシがなかなかやって来なかったりやって来た関係者が運転するのではなく手で押してどかすなんてこともあったりでした。

 という具合に走って行くと18系統の東端が近づきます。こちらは西端の三角線と違い大きなループ線になっていて生活の場になっている裏道を通るので軌道の脇にご近所の水場があって炊事洗濯中だったりです。この辺りの車窓にインド名物素焼きのチャイの使い捨て容器をうまく使った面白い噴水が見えたのであとで見に行きました。近所の人によると夜はライトアップするのでもっときれいとのことです。


 ポイントの切り替えを待ってから扉つきの側線に突っ込み乗務員用の詰所があるBidhan nagarに着きました。三角線からここまで35分ほどです。出口側はまたループ線の本線(?)と合流する配線になっています。ここは近郊電車のBidhan Nagar Road駅に近く乗り換えは容易です。


★5系統

 Bidhan nagarからは乗合のオート三輪に乗り5系統の北端と地下鉄の駅があるShyambazarに出ました。ここは折り返しのループ線と側線が商店街の裏にあり店の間から電車がにゅーっと顔を出すのでなんだか楽しい雰囲気があります。かつて5系統は北東のBelgachiaまで行って折り返していたのが短縮されてここで折り返すようになったそうです。

 顔を出した5系統に乗ると木々の緑が映える落ち着いた通りを南下し、18系統と交差すると大学がありたくさんの書店が並ぶ東京だったら神保町のような街を通ります。


 さらに南下し、北上して来る25系統とぶつかって西に曲がると軌道が道路の中央から両端に移り駐車するクルマその他もろもろに邪魔されなかなか先に進めません。誰も戻ってこないクルマを前に立往生していたらそのうちに交通整理のお巡りさんがやってきてクルマのドアを何度も警棒でガンガンぶっ叩いたらようやくヌシがやって来たりだとかで時間がかかります。この道路の西端が折り返しのループ線がある終点のEsplanadeでShyambazarから40分ほどでした。

 ここで連接車ではない単行の5系統に乗ったので外観と車内の画像を付け加えておきます。この車両も釣り掛けなのですが色とカタチからなんとなくチェコの四角いタトラを思い出してしまいました。

(後編でもEsplanadeでの話が続きます。)


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