ポー川下流の枝線乗り継ぎ


 ヴェネツィアの玄関口サンタ・ルチア駅から島伝いに船→航行バス→船と南西のキオッジア(Chioggia)まで「ヴェネツィア裏口乗り継ぎ」をしました。国内ではJRよりも私鉄に乗る方がより楽しいと感じることが多いタチだとイタリアでも細々としたローカルな乗り継ぎを続けたくなります。なのでヴェネツィアからの余勢を駆ってキオッジアからさらにポー川下流域の枝線とローカルバスを乗り継いでみることにしました。


 キオッジアの町中で昼食をとりひと休みした後でキオッジア駅に向かいます。船着場のあるキオッジアの旧市街とキオッジア駅、さらに東側の新市街は橋を隔ててやや離れていますが、日中約10分毎と高頻度でミニバスが運行されているので便利です。(運営はヴェネツィアの街と同じ交通局ACTV)


 ミニバスに乗ると旧市街の中心から10分もかからないくらいでキオッジア駅に着きました。キオッジア駅構内でまず切符をどこで買えばいいかと探すと券売機は見つかったものの長らく故障中で直す気配もない感じで、「駅から600m離れたタバッキ(売店)で」買うようにと貼り紙がされてました。ということは駅から買いに行くと往復1200m歩くことになるわけですからかないません。駅舎内にバールはあるんだからそこに委託して売ってくれと思わずにはいられませんでした。

 右の画像はキオッジア駅正面に貼ってあった花屋の広告でなにやら東海道新幹線らしきものが見えますが、この駅は幹線筋の駅Rovigoから来る非電化単線の枝線の終点で今後も高速鉄道とは無縁そうです。軌間は一応新幹線と同じ標準軌ですけれど。


 乗る前から少々くたびれつつホームに出ます。当然新幹線みたい高速鉄道が来るはずもなく、やってきたのはピカピカに更新されたAle668気動車の単行でした。これの折返しに乗って途中のアドリア(Adria)に向かいます。枝線の終点をとんぼ返りでなくバスや渡船で結んでいくのは好きな乗り方ですが、ポー川下流域はヴェネツィアのサンタ・ルチア駅(Santa Lucia)、ここキオッジアChioggia、さらに後に向かうコディゴーロ(Codigoro)という3つの枝線終点を連続でこなせなかなかの都合のよさです。

 発車まで間があったのでこの車両の運転室を見物させてもらいました。昔の飛行機を思わせるようなごっつさとまとまった雰囲気の機器類の配置がカッコイイ感じです。左側通行の左側運転台である点日本の鉄道に慣れている目から馴染みやすい感じがします。


 では発車です。単行列車は平坦線をなかなかの力強さで飛ばし、30分ほどで支線の中間にある主要駅アドリアに着きます。ここは交換駅で、ヴェネツィア方面からの路線との接続駅でもあり、さらに駅前にはバスターミナルもあるこの路線の主要駅です。とは言うもののこのときはごく閑散としていましたが。ちなみにこちらの列車を待っていたキオッジア行きの対向列車(左の画像)は違う塗色でした。雰囲気からするとあっちが旧色かもしれません。イタリアのローカル鉄道の塗色はバラエティに富みどこも凝っていてオシャレなのですがなかなか落書きのないものを見ることができないのが残念です。アドリア駅前は大して何もないようなところで、駅を出てすぐ右手にイタリアの大手バス会社SITAのバスターミナルが見えます。


 バスターミナルに向かうとちょうど下校時間らしく学校帰りの子供と多くのバスが集まり駅より賑わっていました。なかなか立派な建物のターミナルに入ると中はバールになっていてひと休みしたりバスの切符を買うことができます。ここで乗るのはコディゴーロ(Codigoro)行きです。コディゴーロはフェッラーラ(Ferrara)という世界遺産の街から伸びるローカル枝線の終点で、そこまで出るとまた乗り継ぎができます。このバスは訪問時1日3本、旅行後確認したら1日2本になっており過疎ダイヤで使いにくい路線です。


 バスターミナルはガラガラの状態で出発したものの、学校の前で下校する子供を拾いそこそこ乗っている状態になってアドリアの街を抜けポー川を渡ります。ほとんどスクールバス状態なのは日本のローカルバスと同じような感じです。ただ降りる子供が運転手さんとのんびり世間話していたり、しゃべらないまでも少なくともチャオ!と挨拶して行くので見ていてなごみました。

 沿線は平坦な低地の畑ばかりで乗っていてあまり変化はありません。なんだかイタリアまで来て埼玉や茨城千葉といった利根川方面で乗りバスしている気分になってきたところでコディゴーロ駅前(右の画像)に着き、降りると一応よろず屋とバールがありました。ちなみに鉄道の切符はよろず屋の方で販売していましたが12〜15時は昼休みなのでこの時間に列車に乗ろうとするときは困ることになります。15時前に着いて15時半の列車に乗った私は幸い問題なかったのですが最初営業時間に気づかず結構慌てました。キオッジアといいこうした不便さは困ったものです。いつでも開いているバールで売ってくれればいいのにと思うのですが。(もちろん駅構内のバールで切符が販売されていることもよくあります。)


 コディゴーロから乗る枝線はエミリア・ロマーニャ鉄道(Ferrovie Emilia Romagna)の非電化単線です。やってきた列車はAle668とAln663、型と色の違う気動車2両編成でした。上の画像はAle668側です。冷房改造されていないのは幸いで窓を空けてエンジン音を聞きながら畑の風を浴びます。この路線もバス同様どうということもない平たい田舎の畑が続きそうスゴイ車窓というわけではなかったのですが、窓から顔を出して乗ればとりあえず気持ちよくなるのは我ながらトクな性分です。


 途中の側線で新しい塗色のLn880気動車など見たりしているうちにFS接続駅のフェッラーラに着きました。ここでヴェネツィアから続けたローカル乗り継ぎはおしまいになりFSのお世話になります。

 こういうちまちました地味な路線の乗り継ぎは距離が稼げず効率は悪い(?)のですが、乗り継ぐたびに細かく味わいが変わっていく楽しさはやはり格別です。


(2009年訪問)


景色は乗った後に(表紙)イタリアもくじ>このページ

inserted by FC2 system