(ガルガーノ半島一周前編)ガルガーノ鉄道


 ブーツの形をしたイタリアをウェスタンブーツとして見たとき、かかとの上の「拍車」のように見える位置にあるのがガルガーノ半島です。南部のプーリア州に属しアドリア海に面したこの半島には鉄道の枝線が北(San Severo〜Peschici Calenella)と南(Foggia〜Manfredonia)にそれぞれ伸びています。この2つの路線をバスを挟んで乗り継ぎ、半島を一周してみたくなったので足を運ぶことにしました。順番は北の枝線からとします

 投宿していたプーリア州の州都バーリ(Bari)の中央駅を早朝に出る列車でfoggiaを経由しSan Severoに着くと、ホームにガルガーノ鉄道(Ferrovie del Gargano)の車両が目立っていました。駅本屋側の1番線に停まっているのは1980年代製と比較的新しいものの非冷房のAle80形です。この車両はガルガーノ鉄道のみならずFS区間だけを走る列車にも使われていました。また留置線には第二次大戦前からの古い保存車が見え時々手入れされているのか割とキレイな姿です。

(下欄ガルガーノ半島略図の凡例:緑はFS路線・赤はガルガーノ鉄道・紫はバス路線)


 ところで訪問前にガルガーノ鉄道の公式サイトで時刻表を見たところ冷房車を使用する列車にはその旨注記がされていました。なので古い車両が好きな私は「冷房車マークがついていない列車に古い車両が入る可能性が高いだろう」と勝手に考え冷房車マークのない列車に乗る予定を立てそれに合わせて着いています。しかしいざ予定通りホームに行くと停まっていたのは冷房車で面食らいました。しかもなんだかヘンテコな(失礼)スタイルの単行電車です。

 この車両はE100という50年代製のものを更新したそうなのですが、乗ってみると客室内がピカピカなのはもちろん、情報モニターつきの運転室には木材がふんだんに使われ高級感にあふれているのでびっくりしました。


 客室妻面には大型モニターがつき各席に電源プラグが設置され車椅子対応の大きなトイレもつきすさまじい気合の入れ方です。なんだかどこかの特急だかジョイフルトレインの類に乗っている気がしましたが、扉近くに設置された自己改札用の改札機を見ると地方ローカル線鈍行用の車両だということを思い出します。


 高級感はあるもののやや狭い運転室にかぶりつかせてもらいました。フロントガラスは遮光性があり上部にカーテンもついているのでまぶしさはかなり軽減されています。発車時間になって運転士さんがノッチを入れると釣り掛け音が響きまたびっくりで、強烈な更新がされていても足回りは古風でした。釣り掛け音を楽しみながらかぶりついていると今度は生きた腕木(画像はSan Marco in Lamis駅)が見えるという具合でなかなか気が抜けません。


 フロントガラスの上部にはカメラが見えるのでなんだろうと思いつつ客室に戻ったら、なんとモニターに前面展望を映し出していました。残念ながら前面展望を流す時間はごくわずかでほとんどの時間はミュージックビデオが流されていましたけれども、それはそれでローカルな単行電車で釣り掛け音を聞きながらセクシーな歌手のダンスを見ているという妙なシチュエーションですしなんだかわけがわからなくなってきます。


 そんなこんなで意表を突かれまくっていましたがやがて慣れて落ち着いてきました。車窓に目をうつすと半島の付け根の平原から丘をあがりラグーン(ヴァラーノ湖/Lago di Varano)が見え、と非常にキレイですが、その分固定窓化されていて窓を開けられないのがまどろっこしかったりもします。


 訪問時は末端のIschitella〜Peschici Calenellaが工事で運休だったので、残念ですがSan Severoから1時間強乗ったIschitellaでこの怪しくも面白い単行電車を降りて代行バスに乗り換えねばなりません。隣で発車を待っているのは乗って来た単行と同じように古い車両を更新した冷房車ですが2両編成化されています。これも足回りは釣り掛けとのことで、どうやら古い車両から冷房化しているようです。


 代行バスに乗り換えた乗客は私ともう1人だけでした。最前列の「マニア席」を無事確保し、前を走る荷台にでっかい犬を積んだオート三輪を見ているとイタリアの田舎に来たなあという気がします。

 海岸線に出ると運休中の線路と並走するので様子を見ていたら作業車が動いていました。ホテルやビーチが見えいかにもリゾート地らしく、また眺めの良さそうな区間ですからSan Severoからここまで乗り鉄して来たら素晴らしい後半になると思われます。ただ新しめの車両だと窓を開けて潮風を浴びられるけど釣り掛け音なし、古い車両は釣り掛け音はあるけど窓開けられず、となるとどちらがいいのかそこは難しいところですけれども。

 また海岸線から離れたら鉄道の終点Peschici Calenella駅前でした。周りには何もないようなところでしたが、この駅から先のガルガーノ半島は地形が険しくなるのでここで終わっているのだと思われます。 この駅が代行バスも終点なので半島突端の街ヴィエステ(Vieste)行きのバスに乗り換え、完全なバス区間(?)の乗りバスに移りました。


この続きは後編をご覧下さい。


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