ポテンツァの三線軌条 アップロ・ルカーネ鉄道(前編)


 ここではイタリア南部、バジリカータ州の州都ポテンツァ(Potenza)とプーリア州の州都バーリ(Bari)を結ぶ長大な路線を持つアップロ・ルカーネ鉄道(Ferrovie Appulo Lucane/FAL/950mm軌間非電化)に乗った時の様子をご紹介します。

 この鉄道は世界遺産の観光地マテーラ(Matera)に支線を延ばしているため特に鉄道好きでない旅行客でも乗る場面が少なからずありそうですが、私が乗り鉄として興味をひかれた区間はそちらではなくポテンツァ周辺でした。以下全体図とポテンツァ付近の拡大図を示しますのでまずご覧下さい。


 ポテンツァはナポリとタラントを結ぶFSの幹線沿いにあり、丘上都市とでも言えばいいのか、丘の上に展開する街です。

 ただこのFSの幹線はバセント川(Basento)沿いの谷を通る線形で、ポテンツァでは丘の麓を通るだけ。よって「ポテンツァ中央駅」は丘上にある街の中心からはだいぶ離れた低いところにあります。

 この街外れにあるポテンツァ中央駅(「付近」)からは、これからご紹介しようというアップロ・ルカーネ鉄道と、もうひとつFSのローカル支線がフォッジア(Foggia)に向けて出ています。どちらの路線も中央駅からまず北に向かい、15kmほど離れたAvigliano Lucania駅で別々の目的地に分かれるのですが、この並走区間は丘上都市の複雑な地形をぬってくっつき離れしている面白い線形なので地図を見ていて気になりました。そこで乗りに行こうと思ったわけです。(参考のため両線の位置関係を表にしました。「P.」はPotenzaの略です。)


 

 

隣接駅

街の

隣接駅

 

同じ駅

 

FAL

P.Inferiore Scalo

P.Inferiore

真下を経由

P.Santa Maria

三線軌条区間

Avigliano Lucania

→2方向に分岐

FS

-

P.Centrale

東側を経由

P.Superiore

三線軌条区間

Avigliano Lucania

→Foggia方面


 前置きが長くなりましたが実際に乗ったときの様子を始めます。まず着いたのが丘の麓にあるポテンツァ中央駅。静かな街外れであまり店もなく降りたらちょっと困るようなところですが、さすがに州都の玄関口だけあって一応タクシーやバスは見えます。駅前広場を挟んだ正面には小さな駅があり、これがアップロ・ルカーネ鉄道のPotenza Inferiore駅(画像右)。片面ホームのごく地味な無人駅です。

 FSとの乗り換えはこの駅が便利ということになりますが、起終点は西に400mくらい離れた一つ隣のPotenza Inferiore Scalo駅でそちらが運行上の拠点になっています。(なので先に「付近」とつけておいたわけです。)ここで待っていてもつまらないのでまずはそちらに歩いてみました。


 というわけで西に歩いて数分でPotenza Inferiore Scalo駅に到着。留置線が広がり立派な雰囲気です。とは言えこちらも街外れでFSとの乗り換えもないとなれば利用者は少なそうですが立派な駅舎には切符の窓口もあり駅らしい駅でした。


 切符を買ってホームに停まって発車を待っていたAvgliano Citta行きに乗り込みます(画像左)。丸っこい1960年代製の気動車は外見内装ともかわいらしい感じですが角ばった新しい世代の車両と交代が進みかなり数を減らしているようなのが残念。


 乗客は私だけで発車。ポテンツァの街近くでは駅間距離が短めで細々と駅が設置されています。まず先ほどの中央駅前にあるPotenza Inforiore駅でパラパラと乗ってくるのはお約束という感じかな。その後どんどん標高を上げFSの線路を見下ろすようになり、にょろにょろと丘に取り付きながら中腹にある街の中心に近い(と言ってもかなり階段を登らないとたどり着けませんが)Potenza Citta駅でそこそこ乗降がありました。ここから街の真下をトンネルで抜け北に向かいます。

 なおFSの支線は勾配や曲線を避けるためかこの「街の丘」を東に避け外側を回り込むので、同じAvigliano Lucaniaに達する路線ながら街の中心に近い便利なところを経由するのはこちらアップロ・ルカーネ鉄道ということになります。


 街の真下を抜けたあと、FSの支線が近づくとPotenza Santa Maria駅に到着。この駅はFSのPotenza Superiore駅に隣接しています。中央駅とPotenza Inferiore駅の関係同様隣接駅なのに違う名前だと乗り換えのときなど少々とまどいそう。

 ここを発車してしばらく走るといよいよこの路線の要注目区間、三線軌条区間が始まります。単線同士がくっつくだけのあっさりした始まりですが、950mmとFS(標準軌)の三線軌条は日本で見られるサブロク狭軌と標準軌の三線軌条より差が大きいので3本のレールを見たときの印象が違いなかなか面白いものです。この区間に入るとFS規格になるからか曲線がゆるくなり列車も飛ばすようになりました。


 三線軌条区間が終わるのはAvigliano Lucania駅。ここはFSと分かれるだけでなく、アップロ・ルカーネ鉄道もバーリに向かう長大路線と2駅先のAvigliano Cittaで終わる支線とが分かれる駅です。

 一世代後の角ばった気動車と交換したらこちらの気動車はAvigliano Cittaに向かう支線へ。駅を出るとどんどん標高を上げ美しい緑の高原が車窓に展開します。


 終点のAvigliano Cittaに到着。駅の先には留置線があり数両の気動車が憩っています。Aviglianoは列車が登ってきて着くところだけあり眺めのいい町で空気も爽やか。ポテンツァの街の麓からここまで40分ほど、変化に富んだ沿線風景は期待を裏切らないものでした。

 ここから一旦引き返し今度はAvigliano Lucaniaからバーリに向かう州境越え区間に乗りますが、その様子は後編をご覧下さい。


景色は乗った後に(遠距離館)イタリアもくじ>このページ

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