リットナー鉄道・レノン鉄道


 イタリア北部ボルツァーノ(Bolzano/ドイツ語Bozen)の街中から出ているロープウェーでソプラボルツァーノ(Soprabolzano)に上がるとメーターゲージの小さな電車が行ったり来たりしています。かつてこの路線にはラック式の路線がつながりボルツァーノの街まで下りて来ていましたが、事故でラック区間は廃止されてしまいました。そのラック式区間の代わりがロープウェイというわけで、現在は上下を結ぶ幹がロープウェイで上の枝葉が鉄道という珍しい路線形態になっています。それは面白そうだというわけで乗ってみることにしました。

 なおこの辺りはドイツ語圏の南チロルなので鉄道名・地名にイタリア語式とドイツ語式とがありますが、とりあえず他のコンテンツとの兼ね合いからイタリア語式で話を進めます。(レノン鉄道Treno del Renonはイタリア語式、リットナー鉄道Rittner Bahnはドイツ語式)


 まずロープウェイに乗って上がり電車との接続駅ソプラボルツァーノに出ます。車庫から顔を出している茶色の電車はこの鉄道のシンボル的存在になっている開業(1907年)以来の古い電車です。これはシーズンの週末などに走り、普段はドイツから来た中古の電車が頑張っています。

 ソプラボルツァーノ駅前は閑散としていて、毎時1本の電車の待ち時間が長ければ必然的に駅前の線路脇にあるカフェにでも入って一休みするか、ということになるでしょう。でカフェに入ったところカウンターの蹴っとばしがレールでした。線路脇の店なのでシャレたのかどうかまでは聞きそびれましたが本物の中古レールとのことです。もしこの店のカウンターにとまったらぜひ足元を見てみて下さい。なおここではラック式時代の写真を使った絵葉書も売っていました。


 さて乗り鉄ですが、この路線はラッシュンタ(L'Assunta)〜ソプラボルツァーノ〜コッラルボ(Collalbo)の単純な1路線のみです。ソプラボルツァーノ〜コッラルボ間は毎時1本の電車と交互に毎時1本のバスもあって利用者からすると実質30分毎のダイヤになっていますが、ラッシュンタ〜ソプラボルツァーノ間はたったひと駅所要4分の区間なのにどういうわけか一日4往復しか便がありません。

 まずは便数の多いコッラルボまで乗ると所要時間はわずか16分です。基本的にずっと青い芝に山という文字通り牧歌的な沿線で、突然急停車したと思ったら前を鹿が横切った、という具合の癒される雰囲気でした。コッラルボはバスと同居している駅でホームには開業100年を記念した看板が見えます。同じ電車でとんぼ返りして行く電車目当ての客も目に付きこの電車に乗ること自体が観光になっている様子が伺えました。駅前は特に何もないようなところですが、左手奥に下りていくと集落がありいくらかお店などもあります。


 ところでこの電車の運転台はちょっと面白いものでした。使わないときは椅子の背ずりをフタにしてワンタッチで畳めてしまいます。こういういかにもカラクリという感じのものは好みです。


 コッラルボからの戻りはソプラボルツァーノを通り越し終端のラッシュンタまで行ってみます。1日4往復しか電車の来ない区間は短いながらロープウェイや遠くの山がよく見え眺望という点では沿線で一番という感じでした。もう少し便数があると見物に行きやすくていいのですが。この駅には右の車両が留置されていました。


 最後に沿線で見た古い電車オブジェをつけ加えておきます。開業100年を機にこの鉄道は地域のマスコット的な面が強くなっているようです。訪問時雨にたたられたのでざっと乗るだけで終わりにしてしまいましたが、好天なら沿線を歩くとかなり気持ちよさそうです。次は乗り鉄だけでなくゆっくり過ごしに来たいと思いました。


(2009年訪問)


景色は乗った後に(表紙)イタリアもくじ>このページ

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