レーティッシュ鉄道


 イタリアのおまけと言っては申し訳ないのですが、レーティッシュ鉄道とポストバスを目当てに日帰りで半日ほどスイスに行きました。スイスとの国境に程近いイタリアのティラーノ(Tirano)を朝スタートし、スイスに入ってお昼過ぎにはバスでイタリアに戻る乗り継ぎです。


 レーティッシュ鉄道ベルニナ線のティラーノ駅はFSのティラーノ駅前にあり駅舎は別々になっています。世界遺産にも登録された有名な観光路線なのでさぞや混むだろうとドキドキしながら7時半に駅行ってみたところ、サンモリッツ(St.Moritz)行きの発車10分前なのにほとんど誰もいないので拍子抜けしました。シーズンでない朝だとこんなもんなのでしょうか。箱根登山鉄道寄贈の看板が唐突というかやや浮いている感じです。


 駅構内に入ると落書きが多いイタリアの車両に目が慣れたあとだからかキレイな車両がまぶしく感じられます。まだイタリアなのにもうスイスに来たという感じがしました。


 釣り掛け電車を期待していたのに運悪く新型のインバータ車で悪天候も重なりがっかりです。しかしタイトなスケジュールを組んでしまったので次を待つわけにはいかずあきらめました。車両の運用は運に左右されますからなるべく時間の余裕を持ちたいものですがなかなかそうもいきません。

 ティラーノを発車すると併用軌道区間を抜け国境越えてスイスに入ります。もっとも女性の車掌さんがブオンジョールノ!と笑顔で検札に来るので別段外国に来たという感じもしません。言葉と国境は必ずしも一致しませんがこの辺り島国で暮らしているせいか妙な気がしてしまいます。尤も浅草で東武の快速に乗ったら栃木弁の車掌さんで北千住にも着かないうちからもう栃木気分、なんてことはあったりはしますが。


 途中古い電車とすれ違います。乗りたいと思ってた車両よりさらに古いもので指をくわえて眺めるばかりです。動態保存車のお蔵出しでしょうか。こんなのに乗って絶景を見たら最高だろうなあとタメイキが出ます。車両に「ベルニナ」書いてあるのは単に線名が書いてあるだけなのか車両がベルニナ号なのか気になるところです。後者だったら箱根登山鉄道1000形の親玉というか本家ということになりますね。


 新車と悪天候のダブルパンチをくらいつつも雨や雹ためか空転音を響かせながらの山登りはさすがになかなか面白く、また6月の雪景色に圧倒されます。ガラガラなので左右2ボックスを占領し落ち着きなく行ったり来たりしながら2時間余り車窓を楽しみました。


 ベルニナ線の終点サンモリッツの少々手前、ポントレジーナ(Pontresina)で降りてアルデッツ(Ardez)行きに乗り換えます。側線には乗りたいと思っていた釣り掛け車両(左)が見えてうらめしくなりました。世界遺産記念塗装の車両も見えます。


 やがて斜め切妻の大きな顔をしたアルデッツ行きがやって来ました。扉間の低床部の窓がずいぶんと大きいのでびっくりです。展望がきいて好ましいものの開かないのはちと残念ですが。

 車内の自転車置き場に野菜や果物がどっさり運び込まれます。こんなものを鉄道で輸送しているとは意外です。発車すると男性の車掌さんがグーテンタークと挨拶して検札に来ました。この路線はベルニナ線と違い比較的坂は少なく、いい意味でステロタイプなスイスとでもいうような緑の美しい穏やかな車窓が続きます。

 45分ほど乗って降りたのはツェルネッツ(Zernez)です。野菜もここで降ろされクルマに積み換える作業が始まります。手間取っていたのでこちらもリュックとデジカメ置いてあわててお手伝いに加わりました。レーティッシュ鉄道は勝手に観光鉄道のイメージを持っていてあまり惹かれないところも正直あったのですがこういう生活路線の面を見るとなんだかホッとします。作業終了と共に数分遅れで発車した列車を見送り国際線のポストバスに乗ってイタリアに向かいました。


(2009年訪問)


景色は乗った後に(表紙)イタリアもくじ>このページ

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