ブエノスアイレスのロカ線(LGR)


 ブエノスアイレス近郊を走る鉄道の一つ、ロカ線(LGR:Linea Gral Roca)は地下鉄C線と接続するコンスティトゥシオン(Constitucion)駅からブエノスアイレスの南方に路線網を広げる鉄道で、複々線に電車に客車、各駅停車に優等さらに少ないながら長距離列車も混じるというなかなか複雑な路線です。この路線に乗ってみることにしました。


★コンスティトゥシオン駅

 ロカ線のブエノスアイレスのターミナルになっているコンスティトゥシオン駅は大きく立派な駅舎で人の行き来も多く、駅前からは路線バスが数多く発着していて活気があります。

 駅舎は全体にかなり手が入りきれいになっていましたが一角にある長距離乗車券売り場(左下)は改装していないようでだいぶボロっちい感じでした。それでも往年の贅沢さがよくわかる優雅な造りです。

 短距離切符の出札口はコンコースにあり混む夕方になると列がだいぶ長くなっていました。


 電車に乗るのが目当てで来たため特に「ここ」という目的地はありません。とりあえず複々線を進んだ後の分岐駅テンペルレイ(Temperley)までの切符を買ってホームに入ることにしました。改札口は一応あって駅員はいるもののチェックしたりしなかったりと大雑把な感じです。

 駅は頭端式ホームがずらりと並ぶつくりでなかなかの迫力があり、改札を抜けると左から長距離列車ホーム、近郊客車列車ホーム、右手に近郊電車のホームと3種類に分かれて並んでいます。客車ホームを見ていると推進運転での入線はしないようでホームで機回しをしていました。近郊客車列車は頻発しているので機回しはかなり頻繁に行われています。


 近郊電車ホームに行くとご覧の通り多少色のバリエーション(おそらく右が旧色・左が新色)はあるものの電車は来る電車来る電車同じ日本製の車両ばかりでした。なんというかいろんな日本の電車が入り混じったような顔ですが、1676mmの広軌で車幅が広いせいかかつて相鉄で走っていた広幅6000系にも通じるようなどっしりとした印象です。額縁だけ見ると小田急9000形のようでもあります。連結面をのぞくと日本車両の銘板が見えました。


 電車の列車も近郊客車列車も編成中に1両自転車を載せるため座席を取っ払った車両が連結されていて、ホーム上で自転車に乗っている姿も目に付きます。ブエノスアイレス近郊の列車にはここのみならずたいがいこうした自転車用車両が連結されているので感心しました。


 ロカ線に来た理由はこの日車製電車ではなくポルトガルからの中古ステンレス電車が走っているという話を聞いたからだったのですが、30分ばかり見ていてもひたすら日車製の電車ばかりです。じっとしていても仕方ないのでとりあえず日車製電車でテンペルレイ駅まで行って張ることにします。

 せっかく乗るなら車両は同じにしても少しは毛色の違うのがいいな、ということで赤い種別表示のついた快速列車に乗ってみました。左右逆方向に一方向の座席を配置しているのはちょっと面白い感じです。走り出す前からお菓子や飲み物、アイスキャンディーなど次々に売りにやってくるのも楽しいもので、ついアイスを買って食べているうちに発車しごく静かな走行音の中で20分弱揺られテンペルレイに到着します。


テンペルレイ駅

 右の画像はHaedoから来て折り返す非電化郊外路線です。日本で言うところの0番線にあたるホームで発着しています。乗り換え客の多い分岐駅だけあり売店や軽食スタンドが複数いくつもありにぎわっていました。

 駅舎はとんがり屋根が好ましい雰囲気です。電車はかなり頻繁に来るというのにホームから降りて荷運びという大胆な光景が展開されていました。


 テンペルレイ駅で1時間ほど粘っても結局お目当てのポルトガル中古車は姿を見せません。あきらめてコンスティトゥシオン駅に戻りました。(後日郊外の車庫脇を通過した際その車両を一瞬だけ見ることはできたのですが。)

 帰路は気分を変えるため客車の近郊列車に乗ったところ電車と違い扉が開けっ放しなので外に身を乗り出せ爽快でお目当てに逢えなかった残念な気持ちが慰められます。複々線は駅が細かく設けられた緩行線の電車線と主要駅のみホームありの客車線という線路別複々線なのでなんだか東京近郊のようでした。


(2010年訪問)


景色は乗った後に(表紙)アルゼンチンもくじ>このページ

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