ハーグの「電車とバスの博物館」


 現在もトラム網を持つオランダの都市ハーグ(Den Haag)ではトラムとバスが一緒に動態保存されています。ということは文字通り「電車とバスの博物館」というわけですが、ではどんな車両があるのか見物に行ってみました。


 保存施設はハーグ公共交通博物館(Haags Openbaar Vervoer Museum/Remise:公式サイト)といいます。最寄の電停はWouwermanstraat(左の画像)ですがDen Haag HS駅から歩いても1km強とそう遠くはありません。

 博物館はごくわかりやすい位置なので特に迷うこともなく着き、敷地(右の画像)に入ると赤い現役の塗色とは違う昔の車両が何両も停まっているのが見えました。


 広い庫内に保存車両がたくさん並んでいると自分のものでもないのに大変豊かな気分になります。庫内で目立っていたのが右の画像の826号(1929年製)。「顔」についている飾りはリボンのように見えますがよく見ると鉄板製でした。金具に引っ掛けるだけで簡単に飾ることができるという合理的なものです。うまいことを考えるものですね。

 826号は庫内でパンタを上げちょっとだけ走らせていたので乗ってみました。大きい窓の明るい客室には転換クロスシートが並び文句なく素晴らしい雰囲気。気になったのが運転台で、手ブレーキがよくある回転ハンドルではなく梃子のバーです。これを見てふと韓国を思い出しました。ハーグだから「ハーグ密使事件」というわけではなくもちろん電車の話です。以前ソウルにある民俗博物館で昔のソウルの路面電車の実物大模型が展示されているのを見たのですが、そのブレーキも長いバーでした。またサンフランシスコのケーブルカーも同様にバーのブレーキがついています。私はそのくらいしか思いつかないのですがこの形態のブレーキはいったいどのくらい普及していたのかとちょっと気になりました。(ソウルとサンフランシスコの画像がないのに話題にしてすみません。)


 庫内に他のトラムとは雰囲気が違うアンチクライマーがついた床の高い電車(左端の57号・1923年製)がありました。この車両はハーグからライデン(Leiden)に向かうインターアーバン的な路線で使われていたもので客車(左から2つ目の118号・1924年製)を牽いて走ることもあったそうです。古い電車でアンチクライマーというとアメリカのゴツめなインターアーバンを思い出しますが、この車両はあまりゴツさを感じさせず穏やかな雰囲気なので面白く感じました。

 この車両を見ていてヨーロピアンスタイルなどと言われたりする1950年製造初年の玉電→東急世田谷線80形にちょっと似ている気がしたので一番右に並べてみます。いかがでしょうか?(画像の保存車は江ノ電に移って600形となったあとステップを切られ正面窓が二段化されています。それ以前のスタイルの方がより似ているかも知れません。)また同じヨーロッパのインターアーバンでも角ばったイタリア・ミラノの車両と比べてみるのも面白い気がします。


 トラムと同じ庫内にバスの保存車が同居しています。地元ゆかりの車両に混じってロンドンの赤い二階建てバス「ルートマスター」まで混ざっていました。またトラムとバスに関する資料展示室もあり見所だくさんです。


 見物していると保存運行の発車時刻になります。左の画像の電車とバスがこの日の運行車両で、電車、バスの順に乗ってみました。電車は黄色が目に鮮やかな1957年製のPCCカー1165号。博物館の出口は狭いのでそろりそろりと本線に向かって出て行きます。


 保存運行の区間はその便によってあちこちに変わります。私が乗った電車はMarkensepleinという郊外の海岸線に近い電停(左の画像)までの往復で、往路20分のあと10分ほどの休み時間を挟んで戻るという正味約50分の運行でした。本線に合流すると一般の営業列車に混ざって走るのできびきびと走っていきます。半世紀以上前の車両とは言えPCCカーともなればスムーズかつ静かな走りで釣り掛け好きとしてはやや物足りない面もありますが、分岐点をいくつも越え一般の乗客が「何だあれ?」という視線を向ける中停留所を通過して進んでいくのはなかなか楽しいものでした。

 復路のお楽しみは「車庫入れ」の見物で、最後部の簡易運転台を使います。前方の運転台での操作がペダルを足で踏むのに対し後方の簡易運転台は座席の背もたれを外し手で操作という具合に大きく異なるので面白く感じました。


 トラムに「乗り鉄」の後は乗りバスが続きます。乗ったバスはLeylandの4842号(1960年製)です。バスも便ごとにいろいろな行き先があるのですが、この便は郊外まで行って戻る70分もの長丁場を途中休憩もなくぶっ続けで走るので驚きました。軽い気持ち(?)でバスマニアでもない人が乗ったら間が持つのかちょっと心配になったりも。ともあれ懐かしい感じがするエンジン音も気持ちよく運転士さんが慣れた手つきでバスを操る楽しいドライブでした。

 というわけで電車とバス両方の見物と「乗り」が同時にできる博物館のゼイタクさに感心した次第です。


景色は乗った後に(遠距離館)オランダもくじ>このページ

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