釣り掛け国際列車


 シレジア地方ではポーランドとチェコが国境を接しています。この国境を越える路線がいくつかあるのでどこか乗りに行ってみようと思いつき、なんとなく目に付いたのがポーランド側ハウプキ(Chalupki)駅とチェコ側ボフミン(Bohumin)駅間の国境越え区間です。時刻表を見ると日中ポーランド仕立ての普通列車が1日1往復ボフミンまで乗り入れていてなんだかのんびりしていそうな予感。また地図を見ると国境付近はひらけているようで両駅間は歩いて5km程度と徒歩の国境越えもできそう、ということで行ってみることにしました。


 ではその国境越え区間に向かいます。スタート地点は旧型トラムが走るビトム(Bytom)の街。(トラムの話と画像はこちら)ビトム駅からのPKP(ポーランド鉄道)にうまい接続列車がなかったので、トラム5系統に乗ってZabrze駅に出てからPKPの乗り鉄を始めることにします。

(左下の図は複雑な路線網を大幅に簡略化したものです。)


★EN57乗り継ぎ

 Zabrzeで乗るのはカトヴィツェからヴロツワフに向かうIR(Inter Regio)で、車両はポーランドで大量に走っている釣り掛け近郊電車EN57(左下の画像)でした。電車・ボックスシート・都市間列車という組み合わせなのでちょっとJRの快速とか急行に乗るような気分と通じるかも。ただし乗るのはわずか10分、Gliwiceで降りてKedzierzyn Kozle行の鈍行列車「Regio」(右下の画像)に乗り換えたらこれもEN57でした。とにかくポーランドでたくさん走っている電車でよく当たります。


★国際列車

 Gliwiceから37分揺られて着いた終点のKedzierzyn Kozleでお目当ての国際列車オポレ(Opole)発ボフミン行きに乗り換えます。「パタパタ」の行先表示機(左下の画像)には国境の手前にあるハウプキと越えた先ボフミン両方の文字がありました。車両はまたもEN57なのでなんだか「18きっぷ」で延々と国鉄形の電車に乗り続ける感覚と通じるものがありますが、ここポーランドでは釣り掛け音が楽しめるのがうれしい点です。

 国際列車で見栄を張っているのか単なる偶然かこのEN57は大変キレイにリニューアルされていました。行先表示には「CD(チェコ鉄道)」の文字が見え「国際列車に乗るぞ感(?)」が高まってきます。


★国境区間

 一応目的の国際列車となれば盛り上がるはずなのですが、そこは乗り換える前と同じ形式の車両ですからそれほど目先は変わりません。お昼時の車内、Gliwice駅構内にあった中華ファーストフード店で買ったチャーハンを駅弁代わりに食べているとちょっと横浜方面(?)の気分。お腹が膨れあまりスピードを出さず走る車窓の大雑把な草原や林を見ているとうつらうつらしてしまいました。

 この列車に乗る区間Kedzierzyn Kozle〜Chalupki〜Bohuminはほぼオーデル川(オドラ川)に沿っています。ちなみにシレジア地方のオーデル川流域はかつてかなりの部分がプロイセン領で、この区間を建設したのはプロイセンのヴィルヘルム鉄道(Wilhelmsbahn)だそうです。その当時の地図だとポーランドではなくプロイセンの南東端付近で乗り鉄していることになるわけ。ヨーロッパは鉄道時代以後も国・国境の変遷が激しいので私のような遥か東の島育ちだとなかなか頭の中が整理できません。

 さて気づけばポーランド側最後のハウプキ駅、いよいよ国境越えなので目を覚まさなくては。

 貨物列車が目立つハウプキ駅を出ると間もなく国境のオーデル川を鉄橋で越えてチェコに入ります。ポーランド・チェコ共にシェンゲン協定国でパスポートチェックなどは特に行われずあまり国境越えた感じもしませんけれども。(鉄道開通時はここがプロイセン・オーストリア国境)

 この国境を越える付近は単線が並ぶだけのもので、ヨーロッパに多い複線として使われるいわゆる「双単線」ではありませんでした。ハウプキ駅を出たあと両単線の間にはずっとポイントがないまま併走し、やがて東のボフミン方面と西のオストラヴァ(Ostrava)方面に分かれそれぞれが三角形の2辺をなすデルタ線状になり、それぞれ逆の方向で残りの1辺にあたるチェコ鉄道に合流します。

 ハウプキ駅を出て6分、チェコ側のボフミン駅に入ると広い駅構内の一番ポーランド側にある(いわゆる0番線的な)駅舎とくっついた切り欠きホームに到着。この切り欠きホームは編成長に比べやや長さが足りないので最後尾が余りますがドアは全部開きます。

 降りて様子を眺めると毛色の違うポーランド鉄道の釣り掛け電車がチェコ鉄道の駅に間借りする格好で、なんだか地方私鉄がJRの駅に乗り入れているような雰囲気です。(規模が大きいポーランド鉄道を地方私鉄扱いしては怒られるかもしれませんけれども…。)


★徒歩の国境越え

 このボフミン駅はウィーンから延びてきたフェルディナンド皇帝北部鉄道(Kaiser Ferdinands Nordbahn)により1847年に開業したそうです。プラハやウィーンとクラクフやワルシャワを結ぶ幹線筋にあるので頻繁に長距離の客車列車や貨物列車が行き来し機関車の付け替えが行われ忙しい雰囲気。駅舎も立派なものですが昼下がりということもあってか人は少なくガランとしていました。折り返しの「帰国」を待つEN57はしばらくお昼寝、私はまた国境を越えてポーランドに戻らなければならないのでとりあえず静かな駅前に出ます。

 着く前はボフミン駅から国境まで歩いて行くつもりでしたが、チェコ側国境ギリギリのところにあるスターリーボフミン(Stary Bohumin)というところまで行くバス(555系統)が駅前から出ていたのでこれに乗り楽(ズル?)をしました。

 乗るとものの10分くらいでバスは終点に着き、そのすぐ近くに先ほど列車で渡ったばかりのオーデル川(国境)があります。川にかかる細めの道路橋を渡るとすぐにポーランドですから本当にわずかな「チェコ滞在」でした。

 橋を渡ったポーランド側に検問の施設があったもののフリーパスで、そこから静かなハウプキの町を1kmちょっと歩くと既に一度「国際列車」で通ったハウプキ駅(右の画像)。あらためて見ると構内は貨物列車のために広いものの旅客列車は少ないので静かな駅でした。

 というところでポーランド・チェコ国境の「乗り話」は終わりですが、このあと駅近くにある「川でない」国境を少し見物しハウプキからのローカル列車に乗りました。国境見物の話はブログ、ローカル列車の話は当サイトのこちらに公開していますので併せてご覧いただければ幸いです。

(※訪問後一旦上記の国境越え区間を走る旅客列車のうち昼行列車がなくなっていましたがその後運行が再開されています。)


景色は乗った後に(遠距離館)ポーランドもくじ>このページ

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