ポーランドの近郊形電車EN57


 (日本の)国鉄分割民営化も昔話になりJR各社で車両の個性がだいぶ分かれてきましたが、国鉄の新性能近郊形電車(急行形もですが)はだいたい似たような「顔」でした。今も結構見られる113系とか115系などの「あの顔」に親しみがあるというのはもちろん、それこそもう見飽きたという向きさえあるのではないかと思います。

 さてそんな日本の近郊形電車に近い位置にある電車がポーランドのEN57電車です。ポーランド標準の標準軌・直流3000V電化に合わせたもので、1962年から1993年まで作り続けられその数は1412編成すなわち3倍の4236両に及びポーランド全域のローカル列車で活躍しています。(一部旧ユーゴ圏に渡ったものも。)このEN57の様子を以下ちょっと見てみます。


 EN57は制御車+電動車+制御車の3両1ユニットで、これがひと組、あるいは「重連」・「3重連」と3の倍数で編成を組みます。「クモハ」や「サハ」はありません。(車番は編成単位で振られ両端の制御車にはそれぞれra・rb、中間車にsとつける方式)3枚窓の「顔」を見ると真ん中の窓が細いため一見貫通扉がありそうな気がしてしまいますが非貫通です。

 そんなわけで中間車は常に電動車ということになりますが、これがありがたいことに釣り掛けですから私は必然的にここにばかり乗ることになります。走行音は低音からよく響き大変楽しめました。

 客扱いする扉は1両に2ヶ所あり、そこはデッキになっています。このデッキは連結面ではなく中間寄りにあり、1両がデッキで3つの部屋に分かれる構造です。このうち両制御車の運転室隣は荷物室になって荷物用扉があるので、日本式に表現するとクハニ+モハ+クハニということになりちょっと妙な感じ。

 客扱い用の扉は戸袋がついた両開きで、ステップがつき高いホーム・低いホーム両方に対応しています。ただそのどっち用ともつかずやや中途半端な印象も。デッキには自転車を持ち込むツワモノもいました。(ちゃんと自転車専用スペースを設けている車両もあります。)

 客室には4人掛けのボックスシートが並び各ボックスごとにテーブルとゴミ箱がつきます。腰掛の形状や内装にはかなり個体差があるので好みのものに当たるかは運次第。デッキはあるけど連結妻面まで座席が並ぶ、ということから日本の近郊形と急行形の間くらいの感覚です。


 好みの釣り掛け音を聞いて「イイ電車だなあ」と感心しつつ運転室にお邪魔しかぶりついたところで「あ、ここでは釣り掛け音が聞けないんだった」と気づきました…。それは仕方ないとして低運転台で展望がきき木目が使われ落ち着いた雰囲気はなかなかのもの。左コントローラ右ブレーキなのは日本の電車と同じですが右側通行・右側運転台だと最初はなんとなく妙な気がするものです。また扉の開閉は運転士さんが行います。(閉扉は車掌さんの発車合図後)


 EN57には製造時期の違いでバリエーションがあり、初期車は側面にリブつき、中期には側面のリブなし、後期はリブなしかつ正面のデザインが2枚窓、とスタイルが変わっています。3枚窓から2枚窓に、という変遷は湘南電車の80系とも通じるような気がしておもしろいところ。

 また塗色は上に貼った画像のような赤系のPKP(ポーランド鉄道)標準色のほか、PKP以外の運行主体のものがあります。下の2枚はそのひとつ、ワルシャワ近郊で列車を運行するKM(Koleje Mazowieckie)の塗色です。


 製造当初ではなく改造による変化もいろいろあります。ことに強烈なのがこの画像の車両で、「顔」もさることながら釣り掛けのままインバータ化されているので発車するとインバータ音と釣り掛け音が同時に鳴り響いていました。(防音対策が強化されたとみえ音量は静かめでしたが。)デッキのない内装はピカピカで新車のようでしこれならまだまだ活躍が続くことでしょう。


 というわけでざっと見てきたこのEN57はとにかくたくさん走っています。最初に日本の新性能近郊形電車を引き合いに出しましたが、釣り掛けとなればそこに70系とか80系が混ざったような感じというのか、さらにインバータ化まで混ざるとなればまさに時代のカオスです。

 ともあれ私のように「ボックスシートの釣り掛けがそっちこっちに走っていた時代」に間に合わなかった世代からするとEN57に首都ワルシャワの近郊から単線ローカルまで「狙わなくてもいくらでも乗れる」ような状況にあるポーランドは大変ありがたく感じました。


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