軽便鉄道の食堂車


 ポーランドの軽便鉄道の実用的な定期旅客列車は2012年に運行がなくなりましたがシーズンに観光列車を走らせる路線が各地に存在しています。そのうちの一つに食堂車を連結した列車を走らせているところがあるというので乗りに行くことにしました。

※上述の2012年に運行を停止した狭軌路線(Pleszew Miasto〜Pleszew Wask)は2015年に定期旅客列車の運行を再開しました。(乗った話はこちらです。)


 お目当ての軽便鉄道が出ているのはイェドゥジェユフ(Jedrzejow)という町で、宿をとっていた古都クラクフ(Krakow)から朝の鈍行で北へ1時間半ほどです。鈍行を降り軽便鉄道がある東に歩いていくとバスの車庫でなんとなく懐かしさを感じさせる凝った看板(?)が目に付きました。


 バスの車庫の先、(PKP・ポーランド鉄道の)駅から1kmくらい歩いたところにお目当ての軽便鉄道の駅があり、これから乗ろうという列車がすでに発車を待っていました。ディーゼル機関車+客車3両+「食堂車」+有蓋車の計6両という堂々とした編成が750mm幅のか細いレール上に載るとなかなかの迫力。6両全て異なった車両というデコボコぶりはおもちゃ箱から引っ張り出してつなげたようで見ていて楽しくなります。前から順番に見ていきましょう。


 機関車の次は気動車の付随車として作られたルーマニア製車両。かつてポーランド各地の軽便鉄道にルーマニア製気動車が投入されたそうです。質実剛健というか実用本位な雰囲気で旧共産圏らしい感じ。


 後ろには手作り感のある怪しい客車が続きます。窓にガラスのない開放的なつくりでプラの座席が並んでいます。なんというか公園のあずま屋に台車をくっつけたみたい。


 あずま屋車両の隣は編成中一番落ち着いた雰囲気の客車(トイレ付)。特に等級はなく全車自由席の列車ですから全く違った雰囲気の3両の乗り心地を味わえるわけで、その意味でも贅沢な列車です。


 次はいよいよ贅沢さを不動のものにしている(?)お目当ての食堂車で、最後尾にはトラス棒付きの渋い有蓋車を従えています。この有蓋車は発電機が積まれた電源車でした。


 定刻の10:00になると全部で20人くらいの乗客を載せて発車しました。車掌さんが券売機でレシート状の切符を売り歩き、終わると「食堂車でビールを販売しています」というアナウンスが入って飲み助たちが笑顔とともにぞろぞろと食堂車に移動。もちろん私も。

 食堂車は半室などではなく一両丸々調理・販売・飲食スペースなので軽便の小さい車両であってもなかなか立派なものです。この日の食堂車は一人で切り盛りされ、販売されていたのは飲み物とおつまみ類、お菓子に絵葉書などの鉄道グッズ。ちゃんとした食事はある程度まとまった数の事前予約が必要とのことです。フライドポテトを注文したところちゃんと車内のフライヤーで油を使って揚げられ、ビールはポーランド名物のラズベリーシロップが追加可能でした。

 終点までの走行時間は1時間50分もあり、車内は空いていてビールもつまみも注文できるとなればすっかり油断してしまいます。ビールは美味しく、あつあつのフライドポテトをつまみながら一杯、空になったら今度はラズベリーシロップを追加し赤く色づいた甘いビール、さらに一杯、と午前中なのに止まらなくなりました。持ち込みや車販のビールを座席で飲むのも悪くないものですが、食堂車やビュフェというのは格段に美味しさが違う気がします。ビールを一般客車に持っていって飲む向きも多かったのですが

 話がちょっと落ちますが、飲んでいれば「出し」たくなるのは当然のこと。連結面には幌がなく段差が大きい上に揺れるので酔っ払って通るとスリルがありました。車端は幅が絞ってあるのでただでさえ軽便なのにさらに「細く」見えます。

 ガッコンガッコンした軽便の揺れやゆっくり流れる緑豊かな車窓を見ながら飲んでいると早く時間が進んでしまうもので、結局終点直前までずっと食堂車で過ごしてしまいました。イェドゥジェユフから30km先、11:50に終点のピンチュフ(Pinczow)に到着するとのんびり散策でもするのかなという雰囲気の人、自転車を降ろしてサイクリングを始める人、さわやかな空の下三々五々週末を過ごすため散っていきます。私は千鳥足で全くさわやかではありませんが…。


 折り返し列車は14:35発で、途中長時間停車を挟みイェドゥジェユフ着は18:00と3時間半近くかかってしまいます。私は時間に余裕がなかったためとんぼ返りを避ける意味もあってバスに乗ることにしました。駅から先、廃線になった線路を歩いていくとやがて線路がなくなって道になり湖に出ます。湖畔を南に向けて歩いていくとごく小さなバスターミナルがあり、ここでピンチュフの北にあるキエルツェ(Kielce)行きのバスに乗りました。(キエルツェまで所要約1時間・終点はキエルツェ駅近く/運賃は車内で前払)

 というわけで乗りに行ったんだか飲みに行ったんだかよくわからなくなってしまったわけですが、幸せな時間を過ごせ大満足です。


イェドゥジェユフ鉄道公式サイト


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