マドリード近郊の登山電車


 マドリードには「セルカニアス・マドリード(Cercanias Madrid)」という近郊鉄道網があり多くの系統がマドリード中心部と郊外を結んでいます。このセルカニアス・マドリードの路線図を見ていてC-9という系統が目につきました。C-9はマドリード中心部を通らず、マドリードから北西にかなり離れたセルセディリャ(Cercedilla)からコトス(Cotos)までを結んでいて列車の本数は訪問時1日4往復と少なく大都市近郊らしくない感じです。それで気になり乗りに行くことにしました。


 というわけでまずマドリードの街中にある駅Nuevos MinisteriosからセルカニアスのC-8(下左の画像の右の電車)に乗ってセルセディリャ駅に向かいます。1時間14分とかなり乗ってセルセディリャに着くと駅本屋側ホームのマドリード方にC-9の頭端式ホームがくっついていてやや小ぶりの電車が停まっているのが見えました。またホームの隅では現在のC-9の車両の前に使われていた車両(下右の画像)が保存されています。


 C-9は車両が小ぶりなだけでなくメーターゲージなのでスペインの標準軌1668mmのC-8と並ぶとだいぶか細い感じがします。発車を待つコトス行きは両運転台の電動車と片運転台の付随車の2連でした。客室はボックスシートが並び落ち着いた好ましい雰囲気です。運転台は右側に整然とまとめられ左側には手ブレーキが設けられていました。


 セルセディリャを発車するとすぐに急勾配を登り駅やC-8の電車がだいぶ下に見えるようになります。ちょっと箱根登山鉄道の箱根湯本駅を思い出してしまいました。駅から離れるとしばらく道路脇を登って行きます。


 馬が放されていたりするのんびりした車窓を見ながらセルセディリャの町を抜けると道路と別れあまり展望の効かない木々の間を登るようになりますが加減速のメリハリはほとんどなくずっと同じペースの走りです。ときおり交換設備の跡が見える駅があるものの途中駅で交換する列車の設定はないダイヤでした。


 スキー場のリフトが見えてきたらPuerto de Navacerrada駅です。沿線はセルセディリャ側を除くとここくらいしか人家が見当たりませんでした。スキー場の山の下をトンネルで抜けると州境を越えマドリード州からカスティーリャ・イ・レオン州に入りますがやはりずっと木々の間を登るばかりです。


 セルセディリャからひたすら登ること41分で終点のコトスに到着します。途中での乗降はなく私のほか5人の乗客全員がセルセディリャからの乗り通しでした。駅の周りには人家がなく森林で線路脇の木立をのぞくと馬が草を食んでいるのが見えるくらいです。駅舎に入ると大きな暖炉が目立ちカフェが開いているのでちょっとホッとさせられます。改めて電車を見ると飾りっ気はないものの整ったスタイルで好ましく感じました。


 かつて延長計画があった名残で駅の先にもレールが続きふさがれたトンネルへとつながっています。トンネルの上はカスティーリャ・イ・レオン州とマドリード州の境の峠でトレッキングコースの入口やロッジ、結構大きな駐車場やバス停があり行楽地の入口という感じではあるものの電車が通じているところにしては地味でちょっと拍子抜けしました。

 セルカニアスの路線ではあるもののマドリード近郊というにはやや遠いかもしれず微妙な距離ですが、ともあれあまり小味の効いた鉄道がない印象のマドリードから気軽に行けるところで落ち着いた雰囲気の路線に乗れ満足です。


景色は乗った後に(遠距離館)スペインもくじ>このページ

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