マヨルカ島の木造電車


 マヨルカ島最大の都市パルマ(Palma de Mallorca)のスペイン広場(Placa d'Espanya)は公共交通の要所です。地上には市内バスの停留所がいくつも設置され一角には914mm軌間のソーイェル鉄道(Ferrocarril de Soller)の駅があり、地下に降りるとメーターゲージの鉄道が発着する5面10線の頭端式ホームと郊外に行くバスのターミナルが隣り合わせにひろがっています。

 マヨルカ島に足を運んだのはこのうちのソーイェル鉄道に乗るためです。まず偵察(?)しに駅の裏手(左の画像)にまわると木造電車が駅構内と路上を行き来する様子が見られなんともいい雰囲気でした。では乗ろうと改めてスペイン広場側の正面(右の画像)から入ると駅舎にくっついた1面のみのホームは観光客で賑わいその人気のほどがうかがえます。


 この木造電車は1912年に非電化で開業したソーイェル鉄道が1929年に電化されたとき導入されたものです。各列車の編成はこの電車が機関車のように1両で客車を引っ張るためパルマとソーイェルの両端に着くたびに機回し(電車回し?)をしていました。電車の客室は前後2室に分かれていてソーイェル側がかつての2等で木のベンチ、パルマ側がかつての1等でゆったりしたソファとだいぶ内装が違います。現在はモノクラスなのでどちらに乗っても運賃は同じです。


 運転台はかなり更新されている様子でした。色々と見物しているうちに発車時間が来ますがソファに惹かれる一方車窓が見やすいのは木のベンチと悩ましいものがあります。結局掛け心地より車窓をとって木のベンチに腰掛けました。駅を出てまず市街地の車道の真ん中の単線を走っていくのは何とも楽しいものです。パルマの市街地を抜けると競馬場の裏で馬が見え、その先では羊が草を食んでいるのでつい猿、鳥、犬と頭に浮かびましたが車窓に猿は見られず(おそらく自然には生息していないと思いますが)、鳥や犬は見ました。


 パルマの市街地では地下、郊外は地上を走るメーターゲージと並走したのち立体交差した辺りから車窓の山の存在感が増していきます。曲線が増え高さを稼いで行きますが走りはずっとマイペースという感じです。交換施設のあるBunyola駅でいくらか乗客が増えるとマヨルカ島の北部で東西にのびるトラムンタナ(Tramuntana)山脈を貫く長いトンネルに入ります。


 トンネルを抜け山脈の北側に出ると片側のみホームのある信号所(Mirador del Pujol d'en Banya)で対向列車を待つためしばらく停車しました。(対向列車は停車せず通過)ここは景色がよいところでこの時間を利用して見物のためホームに降りることができます。眼下にはこれから向かうソーイェルの町がよく見えました。


 行き違いを終えるとかなりの遠回りで高度を下げていきます。オリーブやレモンの木、人家の裏と徐々に町らしくなる車窓を見ているとほどなく終点のソーイェル駅に着きました。パルマからここまで約27kmに70分かけるのんびりした走りは大変気分のよいものでしたが、ホームの脇の坂にはソーイェル港(Port de Soller)に行く路面電車が待っていてさらに乗り継げるのでいよいようれしくなります。(路面電車の話はこちらです。)


 ソーイェル駅は車庫が隣接し古めかしい事業用車やターンテーブルが見え、駅前に出ると郵便車を改造した観光案内所があり、と楽しくおとぎ話にでも出て来そうな雰囲気です。ホームに出て来て列車を見送る猫はひょっとすると駅長さんだか助役さんかもしれません。


景色は乗った後に(遠距離館)スペインもくじ>このページ

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