ルーマニア最古の現役客車(後編)各駅の様子


 前編の続きです。後編ではオラヴィツァ(Oravita)からアニーナ(Anina)に向かって順番に各駅の様子を見ていきます。


 オラヴィツァを出発して1つ目は朽ちた建物が残るBradisoru de Jos(左下)、2つ目はこれ駅なの?というようなただの線路端にあるDobrei(右)です。こうした降りてどこに行くんだろうというような小駅でもわずかながら乗降客が見られました。


 3つ目、オラヴィツァから16kmにしてすでに1時間弱が経過すると交換駅のLisavaに着きます。ここがアニーナまでのほぼ中間です。上下線はS字カーブを描いているため両端のポイント間は見通しがきかず山間部の狭い場所を切り開き設置された様子がうかがわれます。ゆっくり交換線を通過しながら石炭貨物の長大編成が行き来した時代を想像してみました。

 現在は通常の旅客ダイヤの場合途中駅の交換はありませんが、アニーナ側にある駅舎に駅員が配置されているのみならず長い交換線が終わる離れたオラヴィツァ側のポイント前にも小屋があり職員が詰めていましたから時々はまだ貨物列車等があるのかもしれません。


 4つ目は地味な小駅のCiudanovitaです。ここも周囲に人家は見えないのに降りる人がいました。険しい地形の合間には高原的とでも言ったらいいのか穏やかな風景も見えほっとします。


 トンネルのすぐ隣にあるスイッチバック駅が最後の途中駅Girlisteです。蒸気機関車や重量のある貨物が多い頃に使われたのかも知れませんが、乗った旅客列車はスイッチバックをして入る駅には入らず駅の脇を抜ける本線上に停車し客扱いをしてしまいました。


 終点のアニーナ駅に近づくと朽ちつつある積炭場の跡を通ります。設備の真下を抜けるので少々怖い雰囲気です。一見廃線のような光景の中細いレールの光が頼もしく見え映画のワンシーンのようでした。


 オラヴィツァからずっとひと気のないところを走って来ると小さなアニーナの市街地が大都会のように見えてしまいます。自転車で遊ぶ元気な子供たちは列車を見るや大喜びで追いかけて来てしばらくの間なんとか追いついていました。列車はその程度の速さだということがわかります。警手さんがいる踏切を抜ければもうすぐにアニーナ駅です。


 オラヴィツァから33km、2時間の山登りを終え広い緑の側線が広がるアニーナ駅に到着しました。機関車はすぐに機回しをして折り返す準備を整えます。20分後に発車する折り返し列車の乗客は数えるほどですからとんぼ返りするマニアの私や乗客が連れていた犬くんも貴重なお客ということになりそうです。とんぼ返りで往復4時間も乗るわけですが、遅いということは距離は短いわけで運賃が一般路線の鈍行の低い賃率だとなんだか申し訳なくなってしまいます。


 駅前に出ると店などは見当たらず向かいの家が飼っているニワトリやアヒルがウロウロしていてホームにまで乱入してくるのどかさでした。


(2010年訪問)


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