2軸の古典気動車(平原の支線編)


 ルーマニアの各地で活躍する2軸の古典気動車77形には山間地の森林を走る路線で先に乗りましたが、その後ルーマニア西部のセルビア国境に近い平原でも乗ったのでそのときの様子を以下紹介します。


 77形に乗った平原の路線はルーマニア西部のカルピニシュ(Carpinis)とヨネル(Ionel)を結ぶ31kmの枝線です。1日3往復(土日はそれぞれ0.5往復ずつ運休)運行されていて訪問時は全て77形による運用とのことでした。

 カルピニシュは主要都市ティミショアラの中心駅ティミショアラ北駅(Timisoara Nord)から西のジンボリア(Jimbolia)に向かう路線(単線非電化)の途中にあるため、まずは夕方近いティミショアラ北駅(左の画像)から客車列車で約30分、24kmほど揺られます。カルピニシュ駅(右の画像)で降りると目の前には旧塗装の77形が2両編成を組んで停まっていました。これが16:41発のヨネル行きです。


 ジンボリア行きが発車した後にこちらの列車の腕木がピョコっと上がり進行現示になります。ここカルピニシュ駅だけでなくルーマニアのローカル線ではまだあちこちで腕木信号機が現役なのでうれしくなりました。


 乗り込むと座席はコチコチのプラ製でロングシートとクロスシートが混ざったような配置です。車両中央の業務用スペースで狭くなっている通路部分には折りたたみの補助椅子もついています。壁面にはところどころ大穴が空いてしまっていてスチロールが詰められている中身が見えました。運転台の機器は山間地で乗った車両より前の時代の姿ですが、それでも製造から長い時間を経て相当に手が入っている様子です。

 正面は2枚窓で貫通路がないため車掌さんが器用というより曲芸的と言うべきか走行中に側扉から隣の車両の側扉に飛び移っていたのでびっくりしました。一応ここの路線は終始鈍足ではあるのですけれど。


 発車する沿線はずっと平坦でトウモロコシやヒマワリの畑と草原が続くばかりです。速度は出してせいぜい30km/h、終点のIonelに近づくと20km/hを切るという鈍足ぶりで31kmを1時間半かけて走ります。沿線はセルビア国境にほど近くセルビア系住民が多いため駅名板にはセルビア語のキリル文字表記が併記されていました。またハンガリー系住民や定住しているロマも多い複雑な人口構成の地域なのだそうです。

 この辺りは川の堤防はないかあっても低く、最近の洪水では辺り一面が水に浸かってしまい被害がひどかったそうです。のんびり眺めていると穏やかな風景で想像もつきませんけれども。

 そんな平原をカルピニシュから延々と南に走り18時を回って終点のヨネル駅に到着しました。この駅から西に3kmも行けばもうセルビア国境です。2両編成の座席がさらっと埋まる程度いた乗客はほとんど途中駅で降りてしまいこの駅まで来る人はごく少数でした。当然駅も閑散としていて駅舎は無人、また駅前に店などは見当たりません。遊び乗りのこちらは10分程度の折り返し待ちを過ごしてカルピニシュへとんぼ返りします。


 定時よりやや遅れ20時を過ぎ暗くなったカルピニシュに戻ってきました。この列車と接続するジンボリアからのティミショアラ北駅行きは黄色い新塗装の77形2両編成だったので新旧色乗り継ぎということになります。ここからはヨネルへの枝線より線路状態がいいため速度は50km/hを超えこういう車両だけになかなかのスピード感です。とは言え遅れは取り戻せないまま定時よりやや遅れて21時過ぎのティミショアラ北駅に着きこの日の乗り鉄を終えました。


 最後に翌朝ティミショアラ北駅で見かけたジンボリア行き混色4連の画像を貼っておきます。小さい車両でも4連で煙を上げて出て行く姿はなかなかの迫力がありました。


※残念ながらその後カルピニシュ〜ヨネルの旅客列車の運行はなくなりました。


(2010年訪問)


景色は乗った後に(表紙)ルーマニアもくじ>このページ

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