集集線と代行バス


 台湾中部、濁水渓に沿って走る台鉄の枝線「集集線」は改良工事のため2010年4月から2011年1月までの予定で長期運休していました。運休区間は末端の龍泉〜車【テイ】(土偏に呈)間です。

 ところが改良工事中にトンネル内の壁面が崩れるという災害が発生し工事が延びてしまう事態になり、訪問時点ではいつ復旧するかわからないという状況でした。この代行輸送中の集集線にちょっとだけ乗ってみたので以下その時の様子を紹介します。


 まず運休区間にある水里駅の様子です。駅前に龍泉行きの員林客運の代行バスが停まっています。員林客運の一般の路線バスは駅のすぐ近くにある水里バスターミナルで発着しているのですが、代行バスはそちらには寄らずこのように駅前での発着でした。

 なお駅に列車は来ませんが出札口は開いていて切符を販売しています。切符の体裁は普段と変わらない台鉄の区間車用乗車券でした。これをバスの運転士さんに見せて乗ることになります。龍泉駅(無人駅)で列車に乗り継ぐ場合はそのまま切符を持って乗り、運休区間の駅で降りるときは降車時に運転士さんが回収するという手順でした。


 水里駅前で代行バスに乗り、省道16号線を通って集集駅前で停車します。集集線は沿線はもとより路線自体が観光スポットになっているのですが、ここ集集駅では列車が来ないのに駅舎前で記念撮影する観光客が目立ちびっくりしました。中に入ると駅長さんの等身大パネルが代行バスの案内をしています。なかなかシャレたことをするものですね。

 バスに戻りすぐに集集駅を出ます。集集線と並走する区間では積まれた枕木やレールがまだ敷設されていない様子が見えました。


 代行バスと列車との乗り換え地点になっている龍泉に着くと集集線からの引込線がつながっている「兵工整備発展中心」(戦車など兵器を整備しているところ)の真ん前です。というとなんだかおっかない感じもしますがバスの乗り場が設置されるくらいですからピリピリした感じはなくごくのんびりムードでした。駅前に並ぶ商店を見ながら歩くとすぐに片面ホームがあるだけの龍泉駅が見えてきます。


 ホームに停まっているのは日本製の気動車DR1000です。吊り革にロングシートとやや観光路線にそぐわない感じがするのも正直なところですが、車両中央部の丸い「月洞門」がなかなかいいアクセントになっています。


 ここ集集線は今もタブレットを交換して走る様子が見られるのでロングシート気動車との組み合わせに久留里線を思い出しました。カラフルなキャリアの持ち手がいいムードです。

 朱で駅名が彫られた堂々たる「タマ(台鉄での呼び名は路牌)」は「ヨンカク」でした。なお集集線は二水側は電気路牌閉塞式(タブレット閉塞式)、末端側は特種路牌制(スタフ閉塞式)なので画像のものは日本風にいうとタブレット代用のスタフにあたります。

 龍泉から乗るのは次の濁水までたったの一駅ですが濁水渓に沿って下るのんびりとした下り坂を楽しみました。


 というわけで新しい駅舎の濁水駅に到着しましたが今回は時間に余裕がないのでここで西部幹線との分岐駅二水方面から来た交換列車に乗ってとんぼ返りします。

 さすが有名観光路線の絵になるタブレット授受だけあり特に鉄道マニアでもないような雰囲気の観光客も写真を撮っていました。乗ると立ち客こそいないものの結構混んでいます。さらに龍泉で乗り換えた代行バスは列車より収容力が小さいので手土産を提げた帰省客で満員になってしまいました。このときは春節直前だったからですが華やいだ空気はなかなかいいものです。


 というわけでちょっとだけ乗り継ぎを楽しんだ集集線と代行バスは運休期間が長くなったこともあって馴染んでいる雰囲気でしたが、やはりなるべく早い復旧が待たれます。


(2011年訪問)


※集集線は2011年7月に全線の運転が再開されました。


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