バルパライソのトロリーバス(後編)乗りバス


 中編の続きです。前編・中編は「乗り」から離れた内容なのでここでは乗り歩いた沿線風景を見ていきます。


 バルパライソのトロリーバスには停留所らしきものがごく少なく、たとえ待合所の上屋があっても案内書きがないので面食らいました。とにかく人が集まっているところになんとなく停まるという感じです。みんな辻辻で適当に手を挙げては停めて乗っているようなので私もマネして乗りました。

 扉は合板を加工したもので各車微妙にガラス窓の大きさが違い手作り感にあふれています。

 古い車両だけに床が高めですが運転席はさらに一段高い位置にあるので運転士さんの視界は相当高く、大きなアクセルとブレーキをパタコンパタコン踏みながら運転する様子はなんだかユーモラスでした。電車のように惰行をうまく使いながら走るところも面白く感じられます。一番前のかぶりつきの「マニア席」はロングシートなので前面窓が高いことと併せやや前は見にくい感じです。


 前編・中編で見た折返所や車庫は路線の東側なので東から西に向けて話を進めます。路線の東側は複線でArgentina通り、Colon通りと走りますが、西の中心街に入ると街路が狭く一方通行が多いので8の字を描き上下別の経路を通ります。ただ狭いと言っても道の広い複線区間に比べればの話で、一方通行ということもあり狭隘路線という感じではありません。

 架線下をふさぐクルマがいても追い越すことができるのはトロリーバスの大きな利点ですね。そういう意味では線路しか走れない路面電車より狭い街に向いているのかもと思いました。ただあまり狭いと今度は追い越すスペースもありませんけれども。


 西端の折返所、Aduana広場に着きました。ここでトロリーバスは方向を変え東側に戻っていきます。目の前で上下しているのはトロリーバスと並ぶバルパライソ名物の乗り物「アセンソール」(ケーブルカーやエレベータ)です。港が近くなのでコンテナも見えます。

 西端には廃止になった路面電車の線路が残っていました。これも残っていたらなあ、と思いつつ最後は東端の広い複線区間の車窓を見て一周したことにします。頻度が高く複線では次々と対向するトロリーバスがやってくるのもうれしい点です。


 という具合に乗っても見ても楽しい古い車両ががんばるバルパライソは路線規模は小さくともトロリーバスの聖地と言いたくなるような雰囲気がありました。


(2010年訪問)


景色は乗った後に(表紙)チリもくじ>このページ

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