160km/hの釣り掛け近郊電車


 ロンドンにはいくつもターミナル駅があり長距離列車のみならず郊外列車もたくさん発着しています。その中には釣り掛けで最高速度が160km/hに達するものもあるというので乗ってみることにしました。


 夜のリバプール・ストリート(London Liverpool Street)駅です。この駅は金融で有名なシティ地区を控えた位置にあり、仕事が終わって帰宅という様子の人が足早にホームに向かう姿が目立ちます。

 ずらりと頭端式のホームが並び近郊電車がひっきりなしに発着しているので日本の私鉄のターミナル駅を思い出しました。


 今回乗るのはリバプール・ストリート駅をターミナルにしてロンドンの北東部に路線網を広げるNational Express East Angliaの運行する列車です。行先はここから北東32km先のShenfield駅としました。理由はそこまでが複々線区間で、近距離輸送を担う各駅停車はShenfieldまでで折り返し、Shenfieldから先に行く列車は途中通過駅がある快速運転と遠近分離がなされているからです。それなら後者に乗れば高速を味わえるだろうと予想しました。Shenfieldをはじめその先にも分岐駅があり行先は多彩ですが、とりあえずShenfieldまではどれも通るので均すと平日で10分前後くらいの間隔になりさして待たされません。

 この「快速」運用の主力車両はClass321(製造初年1988年)という電車です。あまり愛想のない顔つきですが白を基調とした塗色は落ち着いたリバプール・ストリート駅の雰囲気によく似合っていてる気がしました。見物していて目が合ったので挨拶がてら運転士さんに「どのくらい出しますか?」「100マイル(160km/h)だよ。」と確認して気分を高揚させます。

 編成は1M3Tの4両単位で4、8、12連という具合に組まれていました。乗るのはもちろん電動車です。車内は2+3の5列ボックスシートなのでやや窮屈ですが、通路を狭めても座席を多くとるということはそれほど混雑がひどくないということかもしれません。

 というところで話がオチますがまさかの日本語にびっくりしました。この文面をイギリスで見るとは思いもしませんでしたがここで日本語が出てくるほど日本人の乗客が多いのでしょうか。


 発車するとリバプール・ストリート駅から最初の一駅Stratfordまでは街中を流して走り、そこからは各駅停車を抜きながら夜の複々線をかっ飛ばします。さすが新しめの車両だけあり揺れは少ないのですが釣り掛け音がとてもよく響いてきました。リバプール・ストリート駅から22分乗ってひと気の少ないShenfieldに着いたものの暗くて特にすることもありません。側線に停まっていたなんだか怪しげなヤツを見たらとんぼ返りしました。ともあれ日本では聞きにくくなった釣り掛け音もイギリスではまだまだ健在、それも高速運転で頻発ときているのですからうれしい限りです。


(2011年訪問)


景色は乗った後に(表紙)イギリスもくじ>このページ

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