イギリスの保存鉄道 Dean Forest Railway


 イギリス南西部にはイギリス最長の川「セヴァーン川(River Severn)」が流れ、広い河口が内陸深くまで楔形に切れ込んでいます。その北岸を下流側からカーディフ(Cardiff)、ニューポート(Newport)と遡っていくとやがてイングランドとウェールズの境目を越えた先にリドニー(Lydney)という町があります。このリドニーという町から北の山側にあるParkendまでDean Forest Railway(ディーン森林鉄道・公式サイト)という保存鉄道が6.8kmほど延びていて、気動車を走らせているというので行ってみることにしました。

(※駅の位置関係)

(南端)Lydney Junction〜Lydney Town〜Norchard〜Parkend(北端)


★行き方

 リドニーはグロスターシャー(Gloucestershire)という地域にあり、中心都市はグロスター(Gloucester)です。このグロスターから向かおうとするとまずセヴァーン川北岸を走ってリドニーの町外れを通りニューポート、カーディフに向かう鉄道を思いつきますが、小駅であるリドニーに停まるローカル列車は本数が少なめです。他にグロスターからリドニーを経由するバスもあるもののこちらも本数は少なめ。どちらでもいいのですが往路はちょうどいい時間の便があったバスを利用してみました。(公式サイト:■鉄道Arriva Trains Wales ■バスStagecoach)

 バスはグロスター駅正面を出て右手を奥に進んだところにあるバスターミナル(Gloucester Bus Station・右の画像)から出ています。乗り場にはアルファベットが振られ、リドニーを経由するColeford行きはJ乗り場でした。発車するとセヴァーン川北岸の町をいくつか結びながら飛ばし、40分ほどでリドニーのバスターミナル(Lydney Bus Station・左の画像)に着きます。バスターミナルは町の東側にあたる町外れで周りにお店がなく寂しい雰囲気ですが、すぐに目抜き通りに出ることができ、そこはお店が並んでいます。


 目抜き通りを西に向かうと踏切に突き当たり、折りよく回送列車がやってきました。それなりに交通量のある通りの踏切なので2人がかりで道を塞ぎ列車を通す様子はなかなかの迫力。車両はClass 108という1950年代後期から作られた気動車です。踏切の近くにあるLydney Townという片面ホームの駅に上がって係員さんに挨拶すると「今日は気動車だけで蒸気機関車は走らないんだよ。」と気の毒そうな顔をされました。ということは蒸機が走らないと聞いてがっかりする向きも多いのでしょうか?私は逆に気動車に乗りたくて来たわけですからその旨返事すると笑顔が返ってきたのでひと安心。


 気動車の中には3列+2列の一方向固定クロスシートが並び、乗務員室後ろには大変大きなガラスが入れられ扉も開けっ放しですから前面展望はばっちり。運転台にはスタフが置いてあります。

 乗っているとスタフの交換と腕木信号機を見ることができます。保存鉄道とは言え人命に関わる危険性がある点では一般の鉄道と変わりませんから保安面をおろそかにできないのは当然ですが、こういうところまで古い方式を守っているのは大したもの。


 車内の片隅にはカウンターが設けられ飲み物や手作りのお菓子が販売されています。様々なマグカップが並びポットをヒツジのティーコージーで保温している様子は何だかかわいらしく、これでは紅茶とお菓子を注文しないわけにいきません。

 メニューの脇には絵本やアニメでおなじみの「きかんしゃトーマス」に出てくるデイジー(Daisy)というキャラクターの掛時計が見えます。デイジーは蒸気機関車が主の「きかんしゃトーマス」で異彩を放つ気動車のキャラで、モデルはこのClass108や101121といった1950年代頃のイギリスの気動車群です。この車両内に掛けるにふさわしい時計と言えるでしょう。

 ただこのデイジー、物語の中では大変性格の悪いヤツとして描かれているので私のような気動車びいきにはムカっとくるところ。まあ蒸気機関車を追いやった存在ですから蒸機好きの作り手(?)から見れば悪者扱いしたくなるのでしょうけれども。もっとも今や蒸機もデイジーのモデルになった気動車群も揃って保存鉄道の存在なのですから諸行無常です。


★Norchrd駅

 この鉄道の中枢はNorchrd駅で、上下にホームが分かれています。上のホームはこの駅より北の区間を走る列車用のホームで、下のホームはこの駅止まりの列車用。下には側線が広がり多くの車両が並んでいます。工場を見せていただいたところ整備中の蒸機が並び、この日運行はないものの火を入れて動かしている様子も見られました。オフシーズンでも整備は忙しいようです。

 また駅舎にはグッズを販売するコーナーと並んで資料室(無料)があり、そう広くはないものの数多くの展示がされています。なおこの鉄道の乗車券はこの駅の窓口で買うと硬券で、他の駅から乗るときは車内で車掌さんから買うことになり手書きの補充券でした。乗車券に区間指定はなく一日乗り放題で11ポンド(一般の大人)というシステムです。(イベント時を除く。)


★Parkend駅

 Norchrdから森の中を15分ほど走り開けたところが北端のParkend駅です。対向式ホームと跨線橋があり、現在列車は走らない先には開かずの踏切(車道から見れば閉まらずの踏切)ともちろん停止現示の腕木があってちょっと寂しい感じがします。駅前には羊が放され線路跡に生える草を食んでいました。

 降りると駅周辺は広々としていてあまりお店もなく一瞬さてどうしようと思うようなところですが、すぐ近くにFountain Innというパブがあってちょっと一杯に食事、さらにお泊りもできます。ここで昼食にしてみたところなかなか良い雰囲気のお店でした。


★Ledney Junction駅

 全線通して乗ると30分弱の路線に何度か途中下車しながらの乗り鉄は南端のLedney Janction駅で終わりにしました。駅手前には立派な信号扱所があり腕木も立派です。到着するとデッキブラシやバケツを持ったボランティアの方々が待ち構えていてすぐに清掃が始まるのでびっくり。側線には第三軌条式の電車Class421が留置されていましたが、非電化の保存鉄道が電車を持っているというのは面白い気がします。

 ところでなぜ「Janction」かというと、かつてこの鉄道はここから橋でセヴァーン川を渡る路線とグロスター・カーディフ間の鉄道に合流する側線が分岐していたからとのこと。(そのセヴァーン川を渡る橋は現存せず。)Janctionという字面から何となく乗り換え駅を想像してしまいますが、こことグロスター・カーディフ方面に向かうArrivaの列車が発着するLydney駅は別の駅で歩いて5分程度かかるため訪問の際乗り換え時間をあまりギリギリにしない方がいいと思います。(2011年訪問)


景色は乗った後に(遠距離館)イギリスもくじ>このページ

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